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06 岩殿山〜熊野三所権現祈った聖地

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 修験道の聖地・岩殿山(1008メートル)=写真右=を登拝する。彼岸明けの9月26日朝、JR坂北駅で降り国道403号から差切峡に向かう。1時間ほどで「信濃第15番札所岩殿寺」の道標を左折し、間もなく別所川のせせらぎの中に天台宗の古刹・岩殿寺がどっしりと構えている=同下。修験道の開祖・役(えん)の行者の弟子、学文行者の開創といわれ、中世には岩殿山と一体となった山伏の修行道場として栄えた。


 初秋の爽気を受けながら、本尊馬頭観世音に一日の無事を願い般若心経を奉誦する。本堂前の石造馬頭観世音騎馬像が世に知られ、江戸末期から4月17日の縁日には草競馬が催され、近在一のにぎわいを見せていた。


 近年、競走馬等の用意が困難となり中止となったが、壇・信徒の強い絆により1996(平成8)年から形を変えて善光寺大勧進の導師による天台の秘法「湯立て、火渡り大護摩」が行われている。


 馬が駈けた水田の畔に腰を下ろし、巣だく虫の音と赤トンボの群れを友とし、早めの昼餉を済ます。


 いよいよ岩殿山である。この山は戸隠山を小ぶりにした険しい岩山であり、山名は山上の大きな一枚岩、つまり「岩戸の山」に由来する。気合いを入れて別所川を渡る。


 「南無神変大菩薩、歩々佛々」


 カサコソと病葉を踏みしめるリズムを楽しみながら寺沢沿いの林道をひたすら登ると、約2キロで「岩殿山まで1・51キロメートル」の道標に着く。背伸びをして大きく霊気を吸い、ただ一人の初秋の世界を賞味する。


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 道が細くなると「一の牛王夜灯」(いちのごおうやとう)跡で、漂っている聖なる気配に思わず襟を正す。つづら折りの急登を重ね、2つの涸れ沢を越すと九頭竜社である。雨乞いの聖地で「日照りのとき、巨岩の下の湧き水をかき回すと雨が降る」との言い伝えがある。


 急な岩場に気を配りながら、「なる神様」と呼ばれる雷神社を過ぎ、小さな尾根に出ると風雪に耐えている3つの石塔がある。中央が開創、学文行者の墓で鎌倉時代の作といわれている。敬意を表し般若心経を3回奉誦。「本堂跡」の案内板を過ぎ笹やぶを抜けると、屋根状に張り出した巨岩にびっくりする。


 ここが焼失した奥の院のあった頂上で、山伏たちは背後の岩穴に冬ごもりし、熊野三所権現を祈った聖地である。厳粛な雰囲気に思わず「南無大日大聖不動明王、南無神変大菩薩」と叫び続ける。ここに安置してあった県宝の「三所権現木造男神立像三体」は保存のため岩殿寺境内の収蔵殿へ移され、「権現さん」として強い信仰の絆が受け継がれている。


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 三角点のある南の頂上への峰伝いは足場のない刃渡りのため無理と諦め、往路を引き返す。地下足袋の地面の感触を頼りに一足、一足岩場を下り、一気に林道へ着く。


 岩殿寺へ戻り収蔵殿内の「熊野三所権現」に、「3・11フクシマ」「熊野大水害」の一日も早い復興を心願し、写経を奉納して今日の締めとした。次は東山道支道をたどり善光寺平へ入る。


 「遠くとも一度は参れ善光寺」