記事カテゴリ:

02 甲武信ケ岳 〜千曲川の源流を訪ねて〜

02-0915ph.jpg

 この3月、出張で新潟市を訪れた。市内を貫流する信濃川に架かる万代橋の上から日本海への河口を眺め、この上流は信州を流れる千曲川、いずれその源流を訪ねてみたい、と強く思った。


 7月に入って、山仲間で同じ60歳のT氏に声を掛けてみた。まずは7月中旬の日曜日に計画したが、あいにくその日は朝から雨。その後は互いの日程が合わず、実現したのは8月も盆過ぎになってからだった。


 日曜の朝5時に車で長野を出発。上信越道佐久インターから川上村へ。高原野菜で名高いこの村は東西に長く、道の両側にレタス畑が延々と続く。登山口の毛木平(もうきだいら)には、数十台は止められる駐車場と立派なトイレが。


 8時ごろ、さあ出発。間もなく十文字峠へ向かう道と分かれ、源流コースに入る。最上流の千曲川は、水が岩に当たって砕け、白いしぶきを上げながら「ドードー」と勢いよく流れている。


 川に沿ってしばらく登ると滑滝(なめたき)だ。名前の通り、滑り台のような大きな岩の上を豊かな水が滑らかに流れ落ちる。ここで休憩し、のどを潤そうと水をすくう。手が切れるような冷たさだ。


 登山道を横切る小さな沢を幾つかまたぎ、さらに上流へ進む。緑の木々の下に、岩や倒木が一面こけむしている。見下ろすと、透明な水を通して川底にも色鮮やかなコケが生えている。思わず足を止めて見入ってしまうほどの美しい光景だ。


 登り始めて3時間。薄暗い樹林の中に「信濃川・千曲川水源地標」の木柱が現れた。目指す源流だ。標識の脇から沢へ降りると、倒木や岩の間を縫うようにチョロチョロとか細い水が流れている。


 先をたどると、滴にもならないような水が石の間から染み出している。ここが日本一の大河の出発点かと思うと、特別な感慨がわいてくる。よく見ると、この源流点は大雨が降ったり乾いたりで、日によって近辺を上下に移動しているものと思われる。


 ここまで来たら頂上へと、登り始めた急斜面がきつい。尾根へ出ると眺望が開け、シャクナゲの株間を歩く。登り詰めた頂上には、小高く積み上げた石の上に「日本百名山甲武信ケ岳」の標柱が。八ケ岳から金峰山、国師ケ岳、さらに富士山へと視界が開け、眼下に緑一色の樹林が広がる。


 長野・山梨・埼玉の3県境にあるこの山は、千曲川だけでなく、東京まで流れる荒川、駿河湾に注ぐ富士川の上流・笛吹川の水源でもある。


 同じルートで下山の途中、再び水源地に立ち寄り、「千曲川の源流水」をペットボトルに入れて持ち帰った。帰宅後の焼酎の水割りが、一味違ったのは言うまでもない。


(2007年9月15日号掲載)


=写真=石の間から水が染み出している源流地点