
4月中旬の日曜日。アンズの花見を兼ね、仲間4人で松代の山に出掛けた。当初は東条のアンズ畑を見下ろし、奇妙山(きみょうざん)(1099.5メートル)に登る予定だったが、前日の雨で足元が緩んでいたため手前の尼巌山(あまかざりやま)(781メートル)に変更。玉依比売命(たまよりひめのみこと)神社から天王山コースをたどることにした。
雑木林の間から見える一面のアンズ畑は残念ながら花の盛りを過ぎていた。もう1週間早ければ、ピンクのじゅうたんのような光景が見られただろう。
道は次第に傾斜を増す。上部の岩壁帯に差し掛かる少し手前で、新しい動物の糞を見つけた。「まさか熊では...」などと話しているとき、近くでガサガサと音がする。
一瞬緊張し、身構えると、10メートルほど先の林の中にカモシカがいるではないか。どっしりとした体格で、かなり大きい。慌ててカメラに収めた。しばらくこちらをじっと見つめてから、悠然と歩き出した。
そそり立つ岩壁の直下で一休みし、二手に分かれる道のうち右側の直登コースを進む。片足分の踏み跡しかないような急傾斜を、ロープをつかみながら岩壁帯の裾を巻くように歩いていたときだ。
今度はイノシシが前方を駆け下って行くのを目撃した。こちらに突進して来なくてよかったとホッとしていると、下から「ブオー、ブオー」と不気味な鳴き声がする。

岩場を巻き終わり、奇妙山につながる尾根に出て、急斜面を登り切ると頂上だ。長方形の山頂は中世の尼巌城跡で、郭(くるわ)などの名残がある。この時季はまだ木々の葉が茂っておらず、善光寺平の素晴らしい眺望が楽しめた。
帰路がまた、ひと難儀だ。道しるべのピンクのリボンに沿って下ったつもりが、どこで間違えたのか林道に出た。道はどんどん北へ向かって進む。今さら戻るに戻れず結局、玉依比売命神社とは正反対の県農業大学校側の登山口に出てしまった。
最後は西側に大きく張り出した尾根のふもとを回り込んで帰るしかない。山登り以上のウオーキングの一日となってしまった。
(2008年5月17日号掲載)