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015 鹿島槍ヶ岳 〜立ちたかった双耳峰の頂〜

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 北アルプスの主だった山々でまだ登ってなかった鹿島槍ヶ岳(2889m)に、この夏挑戦した。長野市内からも見える美しい双耳峰に、いつか立ちたいと願っていた。


 天候不順が続いた8月上旬の土曜の朝、4時半に同行のS君の車で長野市を出発。途中、大町市内のコンビニで食料を買い込み、扇沢の爺ヶ岳登山口へ。


 駐車場は既に満杯だったが、1台だけ止められるスペースを見つけ、午前6時過ぎにスタート。初日は爺ケ岳と鹿島槍ヶ岳の間にある冷池(つめたいけ)山荘まで、7時間ほどの長丁場だ。


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 まずは種池山荘まで、柏原新道をひたすら登る。曇りだが時々ガスが切れ、南側に蓮華岳(2798m)がくっきりと浮かぶ。この道で唯一危険個所のガレ場を過ぎると、山荘周辺は一面のお花畑だ。


 紅紫色のかれんなハクサンフウロに黄色のチングルマ。カラマツソウやコバイケイソウの白も目を引く。


 種池山荘で一休みし、爺ヶ岳へ向かう。ハイ松帯の中を涼しい風が吹き渡る。快適な稜線歩きだ。登山客で込み合う南峰は通り過ぎ、ピークの中峰(2669m)で昼食に。


 あいにく視界はほとんど利かないため、冷池山荘へ急ぐ。午後1時半に到着した山荘では、まず外のテラスで生ビールで乾杯。中ジョッキ一杯900円の価値はあるうまさだ。


 夏山最盛期とあって山荘はぎゅう詰め。「布団1枚に2人で寝ていただきます」と言われ、すいているうちに昼寝。3交代制の夕食は、何と一番早い4時半から。食べ終わるとすることがないので、6時前にもう就寝。寝返りもろくにできないきつさだが、疲れていたためか翌朝4時半までうとうとできた。


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 起床し、か細い蛇口の水で顔を洗っていると外が騒がしい。出てみると、東の空が帯状に黄色く染まっている。ご来光の始まりだ。見守るうちに雲海から太陽が顔を出した。ぐんぐん明るさを増す天体ショーに登山客から歓声が上がった。


 朝食を済ませ、6時過ぎに目指す鹿島槍へ出発。小雨だが視界は良好。黒部峡谷を挟んで立山や剣岳も間近に望める。槍・穂高、遠く富士山や八ヶ岳、浅間山まで見渡せる。


 鹿島槍手前の布引岳(2683m)を過ぎた辺りのお花畑で、ライチョウに出合った。母鳥にひな3羽。動いていないと、独特の保護色で周囲と見分けがつかないほどだ。たちまち登山客が集まってきてカメラに納まった。


 登り詰めた鹿島槍南峰は雨交じりの風が強く、休憩もままならない。感激に浸る間もなく下山を開始。目の前の北峰はあきらめざるを得なかった。


 冷池山荘まで戻り、頼んでおいた弁当をもらい、昨日登ってきた道を今度はひたすら下山。鹿島槍往復と合わせて、2日目は9時間の行程だ。午後4時過ぎに扇沢の登山口に到着。大町温泉郷で一汗流し、2日間の疲れを癒やした。


(2009年8月29日号掲載)


=写真=南峰の頂上からガスの切れ間の北峰を望む


 
中高年の山ある記