
9月中旬の日曜日、学生時代以来43年ぶりに仲間4人で戸隠山(1904m)へ登った。 二手に分かれ、午前7時に市内を車で出発。8時前に戸隠牧場で合流し、1台で奥社の駐車場まで戻って歩き始めた。前日の雨も上がり、天気は上々。奥社社殿手前の登山口まで、杉並木のウオーキングが心地よい。
登山者カードの記入を終えて、さあ出発。いきなり木の根をつかんで登るような急坂が続く。一汗かいて尾根に出ると、これから登るギザギザな峰が樹間にのぞく。
登り始めて1時間ほどで岩壁の下段がえぐられた五十間長屋に到着し、ここで休憩。眼前に飯縄山の北側、瑪瑙(めのう)山や怪無(けなし)山の斜面に広がる戸隠スキー場が、左手に野尻湖や斑尾山も望める。

再び歩き始めると、今度はえぐられた部分がもっと長い百間長屋に。中ほどに祠(ほこら)があり、その上には大文字草が群生していた。8月の豪雨で崩れたがけ下をこわごわ通り過ぎると、次は岩場の連続。
幸い鎖が設置されているので登れるものの、侮りがたい難所ばかりだ。中には、3mほど登った岩壁の途中から右側に移動し、再び垂直に近い岩を登り切るような場所も。鎖などない時代に戸隠の修験者たちは、どうやって登ったのだろうか。
岩場を登り終えると、最大の難所、蟻の塔渡・剣の刃渡が待ち受ける。両側がストーンと切れ落ち、幅数十cmの尾根が30mほど続く。またがって進むには幅があるため、立つか這うしかない。がけ下には目を向けず、肝を冷やしながらも何とか全員が渡り切った。
ここを過ぎれば、ひと登りで山頂部の八方睨(はっぽうにらみ)(1900m)だ。文字通り360度の眺望。眼下の鏡池、北側の高妻山がとりわけ美しい。景色を楽しみながら昼食を取り、後は快適な稜線歩きだ。
途中、 蟻の塔渡を南側に見通す位置で、女性2人がまさにアリのように渡っているのが見えた。「ヤッホー」「頑張れー」と声援を送ると、立ち上がって手を振って応えている。我々よりずっと余裕があるようだ。

その先では奥社の社殿の屋根が見下ろせた。よく見ると、杉並木が1本の線になって伸びている。朝方仰ぎ見た、あの峰々の上に立っているのだ。足元は切れ落ちたがけが続く。鮮やかな青紫色のリンドウの花をめでながら何度かアップダウンを繰り返し、下った所に一不動の避難小屋がある。ここからは沢伝いに、車を置いてある戸隠牧場へ駆け下った。
(2009年10月10日号掲載)