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32 『アパートの鍵貸します』(60年) 大人のクリスマス映画は?

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 Q 大人のクリスマス映画が見たいのですが、どんな作品がありますか?


 A 2009年にロバート・ゼメキスが監督したアニメーション映画『Disneys' クリスマス・キャロル』も、ジム・キャリー、ゲイリー・オールドマン、コリン・ファースにボブ・ホスキンス、ロビン・ライト・ペン出演という豪華版で、結構よくできていますから、大人も十分楽しめます。が、やはり、フランク・キャプラ監督の『素晴らしき哉、人生!』(1946年米)や、リチャード・カーティス監督の『ラブ・アクチュアリー』(03年英米)あたりが定番ということになるでしょう。


 説教臭さのない映画がお好みなら、こんな作品はいかがでしょう。

 59年のニューヨーク。(現在では考えられないほど多くの人が雇用されている)大保険会社で働くバドは昇進を夢見て、火遊びをする上司たちに自分のアパートを使わせています。冬の寒気の中、外で時間をつぶし風邪をひいてしまったある日、人事部長に呼び出され、昇進と引き換えに彼にも鍵を渡すことに。


 しかし、部長の密会相手は、バドが心を寄せるエレベーターガール、フランだったのです。初めは気づかぬバドでしたが、会社のクリスマス・パーティーで事実を知ってしまいます。そして、イブの夜、自分の部屋のベッドで眠るフランを発見。彼女は大量の睡眠薬を飲んでいて...。


 そう、テニス・ラケットでパスタを湯切りするあの映画、ビリー・ワイルダー監督の『アパートの鍵貸します』(60年米)です。


 バド役のジャック・レモン、フラン役のシャーリー・マクレーン、そして部長役のフレッド・マクマレイ、それぞれの演技には、全く文句のつけようがありません。初めて見る方はもちろん、何度見たか分からないという方にも、様々な発見があること請け合いです。


 ユダヤ系であるビリー・ワイルダー監督は、クリスマスの宗教性は排除して、習俗としてのニューヨークのクリスマスを描いています。しかし、クリスマスから大みそかにかけてのこの物語も無償の愛の勝利を語ることに違いはありません。その意味では、これもクリスマス・ストーリーなのです。


 ユダヤ系作家であるポール・オースターが新聞に寄稿したクリスマス・ストーリーを基に製作した『スモーク』(95年日米)が十分にクリスマス的であることに通じています。どんな宗教を信じていようといまいと、「クリスマスの精神」とは、広義の愛そのものなのですから。

(2011年12月3日号掲載)


=写真=『アパートの鍵貸します』フォックス・プレミア・ブルーレイ 第10弾 発売/20世紀フォックス ホームエンタテインメント ジャパン 4935円

 
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