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33 『新諸国物語 笛吹童子』(1954年) 〜ドラゴンと龍の違いは?

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 Q 今年は辰年です。映画の中のドラゴンと龍の違いを教えて下さい。

 A 一般に西洋世界のドラゴンは、地底深く住んで宝を守っているイメージ。場合によっては、邪悪な性質を帯びていて、英雄に退治される存在です。


 最も有名なのは、ワーグナーのオペラでも知られる英雄ジークフリートとドラゴンの話。映画史に燦然と輝く傑作、フリッツ・ラングの大長編『ニーベルンゲン』(1924年)にも巨大なドラゴンが登場します。


 児童文学の映画化『エルマーの冒険』(97年日)や『ヒックとドラゴン』(2010年米)のような例外もありますが、多くの場合、ディズニーの『眠れる森の美女』に登場するような翼の生えた恐ろしい姿で描かれます。


 東アジアでの龍は四神の一つとして、方角や季節にまつわる神格を帯びた存在、自然の恵みと脅威の象徴です。畏怖すべきものですが、また悪を懲らす存在でもあります。翼を持たずして天に昇る龍は幸運をもたらす瑞兆です。


 韓国映画『D-WARS』(07年)がアメリカで酷評された理由の一つは、アジアの龍のイメージが伝わらなかったためかもしれません。


 日本映画では聖なる龍が実際に画面に現れることは、それほど多くはありません。それでも、三木聡監督のコメディー『インスタント沼』(09年)のCGでの登場など、観客の記憶に鮮やかに残る龍の姿があるのではないでしょうか。


 例えば、罪なき男女が磔柱に縛られ、まさに槍が突き立てられようとする刹那、突如雷鳴が轟き、真っ黒な龍の姿が...というシーン。


 『ALWAYS三丁目の夕日』の時代より少し前、ヒャラーリ、ヒャラリコというテーマソングで始まる超人気ラジオ・ドラマがありました。その映画化『新諸国物語 笛吹童子』(萩原遼監督、1954年)の一場面です。


 応仁の乱後の混乱の時代、国を滅ぼされた萩丸、菊丸の兄弟(東千代之介、中村錦之助)と将軍の血を引く霧の小次郎と胡蝶尼(大友柳太朗、高千穂ひづる)の大活躍。剣戟あり、妖術あり、恋あり、歌に踊りあり。髑髏の旗と戦うハラハラドキドキの冒険連続活劇は日本映画にもあったのです。


 錦之助の東映初主演にして彼をスターにした作品ですが、いま見返してみると、登場シーンはそれほど多くはありません。しかし、彼が武士の戦の世界を否定して平和を希求する若者として登場していることは、戦後日本の原点を再認識させてくれる気がします。


 新しい辰年が希望と平和に満ちた年でありますように!

(2012年1月1日号掲載)


=写真=『新諸国物語 笛吹童子』発売元/東映ビデオ(株)販売元/東映(株) 4725円発売中

 
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