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10 戸隠街道 雨池観音・隠滝不動尊 〜新旧の信仰誇る芋井の里〜

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 新春を迎え、1月6日伊勢路に赴き「みちひらけの神」猿田彦神社に写経を奉誦し、今年の道開きとした。


 風の花舞う1月26日、芋井の里を歩く。まず雨池観音を目指し、広瀬運動公園前で戸隠行きのバスを降りると、目の前の丘に雪かぶりの長身観音像が屹立。これが雨池延命観音で、1年間の道中安全と今日の無事を祈願。来歴を雨池観音菩薩管理委員会の伝田仁(ひとし)代表(81)から聞く。


 「芋井地区の有志で平成10年12月2日から百体観音巡礼に出立。秩父34所を手始めに坂東33所と打ち、平成17年4月8日西国33所で結願成就。この感動を後世に伝え、参加者の固い絆の証しとして観音霊場創設を発願した。土地所有者、石材、建設企業の協力を得て観音石像を建立し、樹齢1500年で名高い岐阜県の淡墨(うすずみ)桜の苗を植えた。開眼法要は平成17年5月9日に村の寺・法学寺の古田慶隆上人を導師として盛大に行い、この吉日を例祭日とした」


 私は伝田代表の熱い語りを聞きながら、参加した昨年の例祭が100人を超えていたことと女性の姿が多かったことを思い出していた。


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 降りしきる雪の芋井の里を眺めながら、自分たちの足と手で創り出した観音霊場への誇り、固い絆、そして信仰の篤さに感動して十句観音経を読誦。


 「南無仏、朝念観世音 暮念観世音」

 寒気の中、背筋を立て広瀬の庄の雪景色をたっぷり楽しむうちに上ケ屋バス停に着き、三差路を北上する。閑にして静の雪道を「那一歩、那一息」と足を運ぶと「新四国札所信濃25番霊場入口」の石碑が目に入る。


 ここが荒ぶる達橋沢の聖地・隠滝(かくれだき)不動尊で隠滝不動講と別当の法学寺が法燈を守り続けている。飯縄山に端を発する隠滝は高さ45メートル、幅6メートルで、身の丈4.6メートルの大不動尊像を安置した不動堂と相対している。


 鋭く切り立った崖から流れ落ちる隠滝の中に不動尊を観じながら「昇竜振起、諸難消除、慶事招来」を心願してひたすら不動真言を叫び続けた。


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 「講」は結合を示す組紐の形に由来するが、隠滝不動講の大日方福栄3代講元(81)によると、「この講は1897(明治30)年、芋井地区を中心に祖父清一郎により創設され、厄よけと養蚕の不動さんとして3000人近くの講員を有していた。明治35(1902)年の不動堂再建時に現不動像を安置し、平成14年には『不動尊安置百年記念祭』を下野巴教会(栃木県)の山伏らの参加を得て盛大に行った。毎年5月15日には法学寺の古田幸隆後継住職が祈願太鼓で例祭を行っており、檀信徒は幸隆師入魂の『お米粒お守り』の配布と新築成った庫裏での中食接待を楽しみにしている」と力強く語った。


 私は、雨池観音管理委員会と隠滝不動講、法学寺による"絆の三重奏"を深く胸に刻み込み、雪景色の里を後にした。

 「物の興廃はすべて人に由る 空海」

 

 次は静松寺(茂菅)と霊山寺(花岡平)を巡る。

(2012年2月11日号掲載)


=写真上=冠雪の雨池観音

=写真中=夏の隠滝

=写真下=高さ4.6mの不動尊像