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11 戸隠街道 4山峯入り 〜早春の陽光下 山道駈ける〜

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 雨水を待って2月19日、静松寺(じょうしょうじ)から霊山寺(りょうざんじ)へ歩く。山伏は峰々の祈りと縦走を「峯入り」、山道歩きを「駈ける」と称して修行する。今回は頼朝、葛、観音、大峰4山の峯入りである。峯中(ぶちゅう)安全を善光寺如来に祈願して出立。


 湯福神社前の「戸隠への通りぬけ道」の道標に導かれ、新諏訪の境沢から北に上る。ここから戸隠への脇道が始まり、古道の趣濃い雪道をキシッ、キシッと静松寺へ歩を進める。


 静松寺は源頼朝との縁と葛山城落城哀史で名高い古刹だ。西国33所供養石碑が立ち並ぶ観音道の終点ともなっている。六地蔵の出迎えを受けて本尊阿弥陀如来に写経を奉誦。


 まず裏手の頼朝山(638メートル)に登る。山頂にはかつて松代藩主により鬼門除けの八幡神社が建てられ、昭和初期まで例祭が行われていた。残された柱の礎石に往時がしのばれる。


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 次は北面を降り、難所の葛山(812メートル)への登拝である。日だまりの雪坂を獣の足痕(あしあと)を頼りにひたすら登る。頭上に、雪から雨へと移りゆく早春の陽光を受け、足下には恵みの水となる雪を踏む。「今、私はいのちを生きている」


 一汗かくと雪原の山頂だ。石祠に「3・11福島」の再生を祈願して般若心経を読誦。昼餉を使いながら目線は南の大パノラマへ。裾花の銀蛇が犀川とT字を結び、北信濃を固めている。春が匂い始めた飯縄下ろしに心を残して往生寺へ向かう。


 〈春の風 山深くても ふるさとや〉一茶


 雪深い尾根道を避け、元に戻り林道を東へ進む。表面だけ硬い雪道との悪戦苦闘を続ける。往生寺を視界に気が解け、一気に疲れを覚えるが、入相の鐘が間もなく撞かれる本堂で納めの経を読誦。


 翌20日も快晴。今度は善光寺から戸隠への本道(ほんみち)を往生寺に進み、不動堂で波切不動に般若心経を奉誦して出立。右回りの西国33所観音道から観音山(593メートル)に登拝。観音山は小高い山で明治後期建立の33番聖観音に十句観音経を奉誦し、坂東33所観音道から元へ戻る。


 二つの道に立ち並ぶ石碑の刻銘を確かめ、祈るただ独りの道程は、巡礼にとって至福の一刻である。


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 展望道路を東へ進み、下方のパノラマを楽しむうちに歌ケ丘に。ここから大峰山(830メートル)へのメーンコースが始まる。南面には雪がなく、アカマツの落葉を踏みしめ足取りは快調。大峰城の郭跡や堀切を越すと間もなく山頂だ。


 大峰山は「日本一の門前町」の背景に溶け込む裏屏風で、美称の「大」と形の整った美しい山を意味する「峯」にその名を由来する。目線と想いは、はるか南の紀伊山地・大峰山(おおみねさん)へ。この山は女人禁制の山伏修行の根本道場で、役(えん)の行者像が我々山伏に厳しい眼光を注ぎ続けている。


 「南無神変大菩薩、南無大峰満山護法善神」


 「3・11福島」の再生と祖国日本の発展を祈願して法号を三唱。


 今回の峯入りも納めとなり、中腹の霊山寺で本尊大日如来に峯中安全を感謝し、般若心経を奉誦。次は鬼無里街道の荒倉山(戸隠側)を巡る。


=写真1=のどかな趣の観音道

=写真2=霊山寺へ向かう参道