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35 「夜の大走査線」(1968年) 〜映画賞の主演と助演は?

 Q アカデミー賞などで主演と助演はどう区別するのですか?


 A アカデミー賞は、映画業界人であるアカデミー会員が身内で決める賞です。各部門の候補作は、それぞれの部門の会員、例えば監督は監督だけで、俳優は俳優だけでというふうに決め、候補の中から全会員が投票する仕組みです。選定基準は歴史的にもかなり変化しています。


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 質問の主演か否かは、役の大小ではなく監督や出演者を示すオープニング・クレジットの中で、その俳優が主演として表記されるか、といったことにかかっています。バート・ランカスターとモンゴメリー・クリフトの2人が主演男優賞の候補となった『ここより永遠に』など、複数の俳優を主演とする場合もままあります。


 1968年に『夜の大捜査線』が作品賞をはじめ5部門でアカデミー賞に輝きました。


 うだるような暑さの中、アメリカ南部ミシシッピーの田舎町で殺人事件が発生。めったにない大事件に慌てた警官は、駅で列車を待っていた1人のアフリカ系市民を理由もなく逮捕し、署に連行。間もなく、その人物は休暇中のフィラデルフィアの敏腕刑事と分かり、署長は人種的偏見に凝り固まった男だが、手に余る難事件に「黒い」刑事の助力を求める。


 2人は衝突しつつも事件の捜査を進めるが、差別と偏見から町には敵意が渦巻く。危険を冒しても、事件解決へ執念を燃やす刑事の姿に、人種を超えた共感と尊敬を抱き始めた署長だが、それを言葉に出せないまま2人は駅で別れの時を迎える--。


 監督はノーマン・ジュイソン。敏腕刑事はシドニー・ポワチエ、署長にロッド・スタイガー。


 「私はいつもミスター・ティッブスと呼ばれている」という名せりふと共に、ポワチエの演じたティッブス刑事は、AFIの米映画ヒーロー100の上位にランクされています。しかし、この映画で主演男優賞を獲得したのは、差別主義者の署長を演じたロッド・スタイガーの方でした。


 今年のアカデミー賞で作品賞、主演、助演女優賞の候補となった『ヘルプ 〜心がつなぐストーリー』も、60年代ミシシッピーの「黒人」と「白人」の物語です。その主演女優賞候補は、北欧系のエマ・ストーンではなく、アフリカ系のヴィオラ・デービスの方です。


 差別が完全になくなったとは言えなくとも、確実に時代は変わりました。レイ・チャールズの歌う主題歌「イン・ザ・ヒート・オブ・ザ・ナイト」を聞きながら、南部での撮影中、ポワチエが実際に身の危険を感じていたことを思ってみるのも大切なことかもしれません。

(2012年3月3日号掲載)


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