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36 『This Gun for Hire』(1942) 〜日本未公開傑作見るには?

 Q 日本では未公開の傑作映画が見たいのですが...。


 A 「日本で見られるなら、未公開じゃない」というツッコミが入りそうですが、未公開というのは、通常、「劇場でお金を取って見せてはいない」という意味ですから、劇場公開はされていないけれどDVDが発売されているとか、テレビ放送されたとかいう場合があります。


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 例えば、『シェーン』で知られるアラン・ラッドをスターダムにおしあげた『This Gun for Hire』という作品があります。ちゃんと『拳銃貸します』という邦題もあるのですが、劇場公開されたことはありません。現時点でDVDも出ていません。フランス映画『サムライ』にも影響を与えたフィルムノワールの名作として知られています(テレビで放送されたらしいのです)が、まず日本では見られない作品でした。


 しかし、この作品は1942年制作で著作権が切れているせいか、DVDを米国から取り寄せなくても、WEB上の動画サイトで見ることができます。当然、字幕は付いていませんが、当時の映画の英語は分かりやすいので、見る前に物語の設定を日本語で読んでおけば、中学で習った英語と想像力でなんとか楽しめます。


 アラン・ラッドが好演した、猫と子どもには優しいが非情な殺し屋を、『サムライ』のアラン・ドロンや『レオン』のジャン・レノと比べたり、同じころ作られた『カサブランカ』が戦後、時を置いて日本で公開されたのに、これがなぜ公開されなかったのかを想像してみたりするのもきっと面白いでしょう。


 でも、人が見ていない映画を見たことがあるというのは多少自慢になるかもしれませんが、体験の共有がないので会話を楽しむ材料にはなりません。


 昨年、劇場公開された外国映画は384本。そのうち、アメリカ映画が164本です。アメリカで1年間に制作される劇映画の数だけで600本を超えますので、日本未公開映画の方が公開されている映画よりはるかに多いわけで、過去の分も合わせると膨大な数に上ります。


 もちろん、公開か否かは、商売として成立するかにかかっていますから、良質の映画が必ず輸入公開されるとは限りません。『ホテル・ルワンダ』のように、市民が見たいという運動をして、ようやく公開が実現したというような例もあります。こんないい映画があるから、ぜひ、劇場で見たいという思いが、共通の体験としての映画の楽しみを生み出す力なのです。遠慮せずに声を上げていきましょう。

 「あの映画、劇場で見たい!」と。


(2012年4月7日号掲載)

 
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