022 夜間頻尿 ~一晩に2回以上だと排尿日誌に記録を~

 夜、寝た後に何回もトイレに起きる「夜間頻尿」は困った症状です。睡眠不足の他、様々な面で健康に悪影響を及ぼします。普通一晩に2回以上起き、睡眠不足で困る場合を夜間頻尿と呼んで積極的に治療します。


 夜起きる人の割合は年齢とともに増え、起きる回数も増加していきます。1回以上起きる人は50歳代では男女共50%ですが、70歳以上では80%以上になります。頻度は男性の方が少し高く、70歳以上の男性は30%が夜3回以上起きます。


 三つの要因

 なぜ夜間に何回も起きるようになるのでしょう。夜間頻尿には、尿量が多い夜間多尿、膀胱(ぼうこう)に尿をためておけない蓄尿の障害、夜目が覚めやすい睡眠障害が関連しています。


 2回以上の夜間頻尿を訴える人の6〜8割は、夜間多尿を伴っています。夜間の尿量が適切かどうかの判断には、排尿日誌が有用です。丸1日(24時間。できれば2〜3日分)、排尿した時間と、計量コップなどで測定した尿量を日誌に記録します。1日の合計尿量が2000ccを超える場合は、水分の取り過ぎです。夜寝た後の尿量と朝一番の尿量を加えた夜間尿量が、1日の尿量の3分の1より多い場合は、夜間多尿と判断します。


 一般に夜間の尿量は水分摂取量と関係します。特にお茶やコーヒー、アルコールの摂取は、日中のみならず夜間の尿量も増やし、夜起きることにつながります。また最近は「血液さらさら」などと言って必要以上に水分を多く取る人もいますが、健康な人の1日の合計尿量は1500ccあれば十分です。


 全身疾患も関係

 全身の疾患も尿量に関係しています。高血圧だと夜間に腎臓への血流が増加するため、夜の尿量が増えます。むくみのある人や軽度の心不全では、横になってから体内の過剰な水分が血管に移動し、尿として排出されます。


 他にも糖尿病、貧血、腎臓・肝臓疾患、睡眠時無呼吸、肥満などが夜間多尿に関連しています。これらの疾患の治療は夜間の尿量も減らす効果があります。


 排尿日誌を解析して夜間尿量が少ないのに何回も起きる場合は、膀胱機能の異常や睡眠障害が原因と考えられ、それぞれ薬物中心の治療を行います。


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 夜間の排尿回数は健康状態のバロメーターといえます。自分の全身状態をチェックして、日常生活を見直してみましょう。

(2012年5月12日号掲載)


=写真=西沢  秀治(泌尿器科部長=専門は泌尿器、小児泌尿器)



 
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