023 飛蚊症 ~硝子体の濁りが原因 診察には散瞳剤点眼~

 目の前に何か黒っぽい物が飛んでいるように見え、虫かと思って手で追い払ってみても実は何も飛んではいない...。これは「飛蚊症(ひぶんしょう)」かもしれません。


 青い空や白い壁、明るいモニター画面などを見ているときに比較的感じやすいでしょう。「何か動いたな」と思って、それを見詰めようと目を動かすと、その何かはっきりしない薄黒っぽい物も一緒になって動いて逃げてしまいます。そして目を戻すと、元の位置に戻ってきてしまいます。


 多くは老化が原因

 飛蚊症は病名ではなく、症状の名前です。目の前に蚊が飛んでいるかのように、何かが映って見えるように自覚される状態です。眼球の中の大きな容積を占める部分に硝子体腔(しょうしたいくう)があります。ここにはゲル状の卵白のような、かなり透明度の高い物体、硝子体が詰まっています。この硝子体が何らかの原因で濁ってしまうと(あるいは濁りを含んでしまうと)、その影が映って見えるようになるのです。


 濁りの原因は生理的なものもあれば、病的なものもあります。多くの場合は生理的飛蚊症と呼ばれる、眼球の老化現象によって発生する濁りが原因です。


 硝子体は年を取ると、元のしっかりしたゲル状態から、水っぽい状態に変化してゆき、あるとき眼球の中で小さく縮んで硝子体剥離という生理現象が起こります。このときに発生する濁りで飛蚊症を初めて自覚する人が多くいます。これは、基本的には治療対象になりません。


 ほかに、硝子体に混濁を起こしやすい代表的な原因に、ぶどう膜炎、硝子体出血、網膜裂孔、網膜剥離などの病気があります。生理的老化現象としての硝子体剥離が起こるときに、一緒に出血や網膜裂孔、網膜剥離という病気を伴って発生していることもあります。


 

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受診には運転避けて

 飛蚊症の診察時には、散瞳剤を点眼して瞳を大きく広げます。一度散瞳剤を点眼すると、半日ほど瞳が広がった状態になります。まぶしく、ピントが合いにくく、物が見えにくい状態が続きます。散瞳中の車の運転は危険ですから、眼科を受診する時は、徒歩やタクシーで来院してください。

(2012年5月19日号掲載)


=写真=風間 淳(眼科部長=専門は眼科全般)

 
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