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37 『丹下左膳 決定版』(1958年) 〜チャンバラ映画と時代劇の違いは?

 Q チャンバラ映画と時代劇はどう違うのですか? 


 A 正確な定義があるわけではないのですが、チャンバラは時代劇の下位区分というふうに考えてよいでしょう。歴史劇というと、なんらかの歴史的事実に基づいて作られた劇と考えられるのに対して、時代劇という言葉を使う場合、物語の設定に特定の時代(主に室町の末から江戸時代ですが)を借りている架空の物語です。


 これから再び3Dで上映される『スター・ウォーズ』シリーズの主人公たちの称号「ジェダイ」は、時代劇好きのジョージ・ルーカス監督が「時代」という日本語から命名したものといわれます。


 その挿話で分かるように、日本の時代劇は欧米の映画人に強い影響を与えました。映画の歴史を考えれば、欧米のアクション映画の基本構造を借りて、侍や渡世人が活躍する映画が日本で作られたので、西部劇と時代劇が似ているのは当然なのですが...。


 時代劇の中で、特にチャンバラと称されるものは、剣戟(けんげき)のアクションが物語の中心になっているものです。残念ながら、チャンバラの語源について正確なことは分かっていませんが、刀が打ち合わせられる金属音や、人の動き、そして、そのバックで流れる音楽の畳み込むリズムみたいなものと関係していそうですね。『スター・ウォーズ』でのオビ・ワンとダース・モールの剣戟とバックの音楽は大いにチャンバラ的な気がします。


 そして、チャンバラには、リアリズムによる暴力的な殺陣というより、体操や軽快な舞踊を見るような「立ち回り」という語感があります。


 典型的なチャンバラはサイレント(無声映画)時代に登場し、数々のスターを輩出。1950年代の後半に総天然色での黄金期を迎えますが、60年代のリアリズム時代劇の登場で、スクリーンからテレビに活路を見いだすことになります。


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 典型的なチャンバラ映画を一本紹介するとなると大いに悩むことになりますが、『丹下左膳 決定版』なんていうのはどうでしょう。


 戦前、丹下左膳といえば大河内傳次郎でしたが、その大御所が脇役に回り、左膳に大友柳太朗、その好敵手にして友である剣客に大川橋蔵、その恋女房に美空ひばり。大岡越前に月形龍之介。将軍吉宗に東千代之介。悪役の定番、山形勲も登場します。ちょび安役には松島トモ子。


 58年、松田定次監督による、ひたすら明るい希望の時代の気分を反映した大画面、総天然色、東映の健全娯楽チャンバラ時代劇の典型です。懐かしい方も、初めてという方もどうぞ。

(2012年5月12日号掲載)


=写真=「丹下左膳 決定版」東映ビデオより DVDレンタル中

 
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