026 顔のけいれん ~異常な筋肉収縮にボツリヌス毒素療法~

 顔の筋肉がピクピクと動くのを自覚したことのある人は多いのではないでしょうか。


 一番よく起こるのは、下まぶたなどの筋肉が不随意に収縮するもので、短時間、皮膚の表面がぴくついたり、さざ波のように動いて見えたりします。これを「ミオキミア」といいます。目を休ませたり、十分に睡眠をとったりすることで大抵、数日以内に治ります。


片側顔面けいれん

 これに対して、もう少し強い筋収縮で顔が引きつる病気があります。多くは中年以降に、片方の目の周りの軽いぴくつきで始まり、やがて同じ側の額、頬、口元などに広がっていきます。そのつもりではないのに力が入って目が閉じてしまったり、顔半分が突っ張ってゆがんだりします。


 顔の筋肉は左右おのおのの顔面神経に支配されており、この神経が脳から出てくる所で近くの血管に圧迫されると、その刺激が顔面筋に伝わって異常な筋収縮が起こると考えられています。普通は一方の神経が圧迫されて顔の片側だけに症状が出るので、「片側顔面けいれん」と呼ばれます。


 治療には、内服治療、ボツリヌス毒素療法、手術がありますが、内服薬による治療は効果が弱く、あまり行われません。


 食中毒の原因菌の一つであるボツリヌス菌は、筋肉をまひさせる毒素を作ります。この毒素を注射薬にして局部に注射することで、異常な筋肉収縮を抑えるのがボツリヌス毒素療法です。ただし、根本的な治療法ではなく、1回の効果は数カ月しか続きませんので、繰り返し注射する必要があります。


 一方、血管を移動させて神経の圧迫を取り除く脳外科手術は、片側顔面けいれんの唯一の根本的治療法です。症状が強い人やボツリヌス毒素療法に満足できない人などがこの手術の対象となります。

眼瞼けいれん


 顔面がぴくつく状態の3番目は「眼瞼(がんけん)けいれん」です。中年以降の女性に多く、意思とは関係なく急に両目が閉じてしばらく開かなくなってしまう病気です。まぶしく感じて、まばたきが多くなることから始まります。


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 詳しい原因は分かっておらず、まだ根本的な治療法は確立していません。ただ、この病気でもボツリヌス毒素療法は大変有効です。

(2012年6月23日号掲載)


山本寛二(神経内科部長=専門は脳卒中、パーキンソン病、認知症、末梢神経障害、ミオパチーなど神経内科領域全般)


 
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