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47 藩救済の書 〜どんど焼きで燃やす?

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 「どんど焼きで燃やそうかと思っている佐久間象山の書が家にある。偽物なら持っていても邪魔になるだけ。本物かどうか見てほしい」。1月半ば、週刊長野新聞社に本欄の読者から、こんな電話があった。


 電話の主は市内在住の一人暮らしという80代の女性。筆者が間に入り、春先、丸山日出夫・県文化財保護指導委員にその掛け軸=写真=を見てもらった。縦約2メートル、横約90センチの大きさで、長野漢詩会の宮崎真講師が解読した。


 夾路櫻花發迎人

 ●晴駛馬驕嘶春 

 奔馳偶与飄風会

 灑面飛紅興更新


●=走尓


夾路の桜花、発(ひら)きて人を迎え

晴れをおって駛馬、驕嘶(きょうせい)の春

奔馳、偶たま、飄風と(与)会う

面にそそぐ飛紅、興(たのしみ)は更に新たなり


丸山さんは象山の書をたくさん目にしているが、鑑定はしない。だが今回はこんな見方を示した。


 松代藩の領主は変転著しく、初代真田信之から10代、約250年の間に外様大名から譜代大名に準ぜられるようになった。


 藩財政は3代・幸道の時代の初めまでは比較的裕福だった。ところが、幸道の代に幕府から(1)明暦の大火で焼失した江戸城普請の手伝い(2)信濃国絵図の調整(元禄郷帳)(3)善光寺本堂の再建(4)1707(宝永4)年の富士山爆発に伴う道路、橋梁の改修...など相次ぐ課役があり、信之の莫大な遺金を使い果たしてしまった。


 その上、17(享保2)年の松代大火で町方の6割、城の大方の建物を類焼。幕府から復興資金として1万両を拝借したため藩債は10万両に達し、藩財政は破産に瀕した。


 丸山さんによると、松代藩はこうした窮状を救うため、象山を使って資産家を訪ね書を書いて資金を確保していた。この漢詩もそうした書ではないか、との見方だ。「どんど焼きで燃やすなんて言わず、大切に保存してほしい」と話している。

(2012年6月30日号掲載)