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007 パリ サント・シャペル 〜歓声発すステンドグラス〜

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 パリ1区のシテ島は、ノートルダム寺院が中心だ。ここは団体ツアーなら必ず訪れる。その目と鼻の先に小さな名所がある。パレ大通りに面して、マリー・アントワネットがギロチン刑に処せられるまで幽閉されていたコンシェルジュリーの隣。最高裁判所の敷地ゆえ、入場する際は持ち物検査などチェックは厳しい。だから、訪問者は長蛇の列になってしまうことも多い。


 そこはサント・シャペル。『聖なる礼拝堂』を意味し、訪ねるたびに苦笑する定番がある。「おーッ」「しーッ」「おーッ」「しーッ」の繰り返しなのだ。


 螺旋状の階段を上り、2階に着いた瞬間に口に出る言葉が「おーッ」の歓声。既に2階にいる人からは「しーッ」と叱責の声。そう、ここは神聖な礼拝堂なのだ。


 アメリカ中西部にセントルイスという都市がある。その地方はもともとフランスの領土で、敬虔なキリスト教徒の国王・ルイ9世にちなんで命名された。


 アンバリッド教会の地下に眠るナポレオン・ボナパルトの棺。そのすぐ近くに聖王・ルイ9世の彫像がある。左手に掲げ、見詰める先にあるのは、いばらの冠。イエス・キリストがゴルゴダの丘ではりつけになるまでかぶせられた冠の彫刻だ。


 本物の冠は、コンスタンチノープル(現イスタンブール)の皇帝からルイ9世が交渉して買い取った。それらキリストの聖遺物を奉納するために、当時屈指の建築家ピエール・ドゥ・モントルイユに建造させ、1248年に完成したのがサント・シャペルだ。ただし、いばらの冠はフランス革命時に失われてしまった。


 1階は王家の使用人の礼拝堂で、圧巻は2階。極力、壁を抑えステンドグラスを張り巡らしており、「ゴシック様式の宝石」といわれる。パリ最古のステンドグラスがある15の窓は全体で600平方メートルだが、聖書の1134の場面を描いている。


 階段を上りきった瞬間、思わず「おーッ」と言葉が発せられるのも無理はない。時間帯によって光が織りなす一大ページェントに、誰しもうっとりする。


 同行した人の評価は「パリで一番感動した場所」(50代女性)、「外見は地味だが、長い行列をして待ったかいがあった」(20代女性)、「すごい、の一言に尽きる。事前のガイドブックではノーマークだったが、真っ先に来てもいいところ」(60代男性)、「次回はオペラグラスを持ってじっくり見たい」(10代男性)。


 みな異口同音に称賛する。ただし、このような聖なる場所には、女性がショートパンツで入場することはできないので注意したい。


 正面のバラ窓に向かって左側の旧約聖書の創世記・アダムとイブの話は、聖書にあまりなじみのない日本人でもよくわかる。最盛期を外すか、平日の午前中が比較的すいていて朝の光により輝いて見える。

(2012年6月30日号掲載)


=写真=光が織りなす正面のバラ窓


 
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