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04 プラトンの例え 〜外の鳥とつながりながら 無限に籠が大きく成長〜

 アテネは教育を重視した都市国家であったことはすでに述べたとおりですが、そこで行われていたソフィスト(教師)たちによる教育は、様々な問題を抱えていました。その一つが、空のバケツに水を注ぎこむように「子どもの頭に知識を注ぎ込むことが教育である」という考え方でした。


 ソクラテスの弟子のプラトンは、この考え方を批判し『テアイテトス』という対話編の中で、学習を「鳥籠」に例えて、次のように述べています。


 最初、空っぽの鳥籠(子どもの頭)に、カラスやスズメやハト(個別の知識)が入れられていく。しかし、入れるだけでは、鳥たちを自分のものにしたとは言えないばかりか、鳥籠の中は混乱するだけで、自分の鳥籠の中の鳥が、この世にいる鳥の全てだという勘違いも生じる。


 しかし、自分の鳥籠の中に入れた鳥の性質と成り立ち(個々の知識の性質)を、一つ一つ理解し直し、様々な種類の鳥のつながりを把握することによって、必要な時には必要な鳥を自由自在に取り出すことができるようになる。つまり、知識を応用することができるようになる。そうなると、自分の鳥籠の狭さ(知識の不十分さ)に気付き、新しい鳥を求めるようになる。


 そして、新しい鳥を加えたときにも、すでに鳥籠の中に入っている鳥と、新しい鳥がけんかすることなく、籠の中の鳥たちの入れ替えや、鳥たちの関係の再構成、つまり、知識全体の再構成をすることが可能になる。その結果、鳥籠は絶えず鳥籠の外に向かって開かれ、鳥籠の鳥は、外に飛ぶ鳥たちとつながりながら、無限に籠が大きく成長していく-というものです。


 教育者(教師、親など「教える人」全て)の役割は、鳥を子どもたちの鳥籠に入れること以上に、自分の鳥籠の中のありさまを理解し、整頓することができない子どもたちを助け、鳥たちを自由に鳥籠から出し入れすることができるようにすること。そして、自分の鳥籠が全てだと思い込みがちな子どもたちに、その籠の外に飛ぶ鳥たちの存在に目を開かせ、籠の入り口を開けて、絶えず籠の中身を吟味して入れ替え、広げていくことを助けるものであるのです。


 空を飛ぶ鳥を見たら、お子さんの頭の中の(「与えられた知識」という)鳥が、互いに衝突しながら勝手に飛び回っているのではなく、一羽一羽の鳥の性質がよく吟味され、籠の持ち主の意思によって上手に出し入れされ、また、鳥籠が外に向けていつも開かれている、そんな方向へお子さんの知性が育っているかどうかを気にしてあげてください。

(2012年8月25日号掲載)


 
続・たてなおしの教育