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010 ドイツ ハイデルベルク城 〜ネッカー川を望む大展望〜

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 ロマンチック街道をはじめ、ドイツには幾つもの街道がある。フランクフルトから80キロ先のハイデルベルクは、古城街道の起点。ファンタスティック街道と交差する地点でもある。


 旅をした時に初めて出合った光景は、特に印象が強い。私もドイツの観光地で見た最初の街道の景勝地がハイデルベルクで、古城から見た町とネッカー川を望んだ景色は今でも脳裏を離れない。


 ドイツ最古の大学があるハイデルベルクは学生の街。大学は1386年に設立され、今でも学生にちなむ場所が多い。夜通し酒を飲んでドンチャン騒ぎをした学生が収容された学生牢は名物の一つ。ノーベル賞学者を輩出したハイデルベルク大学の学生が牢獄にぶち込まれて落書きをした跡もあり、今では観光名所に。文豪ゲーテが「祖国の全ての都市のうち最も美しい」と評した。


 中でも、美の中心はハイデルベルク城。夜はライトアップされ、幻想的で不思議な魅力を放つ。城は長年にわたる宗教戦争で破壊されて廃虚となり、カール・テオドール選帝侯が再建を企てたものの再三、落雷に遭い、断念して古城となった。ルネッサンス様式など時代を映した建築美で、観光客が絶えない。


 ここからネッカー川を望む景色は、ヨーロッパ3大ベスト・ビューと私は位置づけている=写真上。


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 城内には、面白い物がある。テオドール選帝侯が作らせた世界最大の木製ワイン樽(だる)だ。直径7メートル、高さ8.5メートル、容量はなんと22万リットル。このワイン樽の前には木製の人形が立っている。ぺルケオ君だ=写真下。彼はテオドール選帝侯に仕えたイタリア出身の道化師。1日18本のワインを平らげる猛者で、人をからかうのが大好きだった。


 すぐ横にある箱の下には取っ手が付いており、「何だろう?」と好奇心で引いてみると、それはびっくり箱。若い女性が失神すると、それを介抱するのが大好きだったという。


 こうした遊び心は、オーストリア・ザルツブルクのヘルブルン宮殿の"水の楽園"で、椅子に座った客を水浸しにして喜んだマルクス・ジティクス大司教を思い出す。ユーモアのセンスは、当時の貴族には欠かせないものだった。


 同じユーモアでも寓意的な彫刻が、ネッカー川をまたぐカール・テオドール橋のたもとにある。大きなヒヒの像だ。かつて多くいたサル(ヒヒ)が里に下りて悪さをしていたので、人々は捕らえては、お仕置きをして山に返した。それを記憶に留めるために、オブジェが作られたのだが、よく見ると左手に鏡を持っている。


 これは、ヒヒの悪さをとがめる前に「人間たちよ、お前たちだって同じだろう。胸に手を当ててよく考えよ」と、皮肉を込めたユーモアのある作品だ。さすが学生の街である。

(2012年9月1日号掲載)

 
ヨーロッパ美の旅