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41 『オーケストラ!』(2009年) セザール賞ってどんな賞?

 Q よく目にするセザール賞ってどんな賞? 

 A 簡単に言うとアメリカのアカデミー賞のフランス版です。セザールの由来は、与えられるトロフィーを製作した彫刻家の名前。歴史はさほど長いわけではなく、第1回は1976年、作品賞はロベール・アンリコ監督の『追想』でした。


 仏映画から鑑賞作品を選ぶ際、セザール賞のノミネートや受賞は目安の一つとなるかもしれません。


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 セザールの受賞式は毎年、パリのシャトレ座というのが決まりです。シャトレ座といえば、マーラーが自作の初演を行ったことでも知られる150年の歴史を持つ老舗劇場です。


 このシャトレ座を舞台にした映画といえば『オーケストラ!』(仏語原題はLe concert 2009年)。


 ロシアの天才指揮者アンドレイは、ブレジネフ時代にユダヤ人芸術家の排斥に盾突いたために楽団を追われ、今はボリショイ劇場の清掃員として働きながら、いつの日か再び、指揮台に立つことを夢見る毎日。ある日、シャトレ座からの出演依頼のファクスを盗み見て、パリで30年ぶりにオーケストラを指揮するとんでもない計画を思いつきます。


 救急車の運転手となっている親友のチェリスト、サーシャをはじめ、かつての仲間を糾合し、元KGBの仇敵をマネジャーとして、パリに向かうことに...。アンドレイの演奏したい曲は、チャイコフスキーの「バイオリン協奏曲ニ長調」のみ。そして、ソリストには心に決めたある女性が...。


 笑いと涙と音楽がぎっしり詰まった2時間。

脚本監督はルーマニア出身のラデュ・ミヘイレアニュですから、「のだめ」あたりよりはかなりひねりが利いています。東欧の社会変動や差別、民族気質を戯画的な手法で活写し、多彩なキャストで芸術の持つ不思議な力を独特のこだわりで描き出します。


 クラシックの名曲がふんだんに登場しますが、ラストのチャイコフスキーのバイオリン協奏曲ばかりでなく、楽団員の一人(演じているのは、有名な※ロマ楽団「タラフ・ドゥ・ハイドゥークス」のメンバー、カリウ)が超絶技巧を事もなげに見せるパガニーニも印象的です。


 聞きものは音楽ばかりではありません。ロシア人たちがしゃべる、どこか奇妙なフランス語も監督のこだわり。セザール音楽賞と音響賞受賞が納得できること請け合いの作品です。


 今年のセザール作品賞は、アカデミー賞とW受賞となった『アーティスト』。9月の清泉女学院大学公開講座「映画を読む」で鑑賞予定の『ル・アーヴルの靴みがき』は惜しくも受賞を逃しました。


 ※ロマ ジプシーと呼ばれた人々のうち北インドから東欧などに入ったとされる集団。

(2012年9月1日号掲載)


『オーケストラ!』DVD&ブルーレイ発売中 アスミック(C)2009ーLes Productions du Tresor

 
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