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03 蝶ケ岳〜上高地 〜徳本峠で宿泊を拒否 2晩簡易テント泊に〜

03-alps-1006p.jpg 7月27日は5時半に朝食を取り、6時に蝶ケ岳ヒュッテを出発する。きょうはきのうの長コースと違い、6時間ほどの短コースなので気が楽だ。


 長塀の頭、三股への分岐を経て大滝山への樹林帯に入ると、めっきり静かになる。このコースを徳本(とくごう)峠へ進む登山者は少なく、草の葉のクッションの利いた道が快適だ。


 遠く霞沢岳を望み、大滝槍見台、明神見晴を通り、高度を下げると昔ながらの徳本峠小屋の裏に出る。


 昭和の初めにバスが上高地に乗り入れるまで、登山者は徳本峠を越え、初めて槍穂高と対面した。歴史ある峠にある小屋はW・ウェストンや芥川龍之介も宿泊した。その歴史ある小屋に泊まるのが目的で上高地から登って来る登山者も大勢いる。2010年に従来の建物の一部を残して新築された。


 受付で宿泊を申し込むと「当小屋は予約者以外は、お断りしています」と宿泊を断られてしまった。私は50年以上も山歩きをしてきたが、宿泊を断られたのは初めてである。文句を言われ、畳1畳に2人くらい詰め込まれたことはあるが...。しかも翌日、宿泊した人に聞くと、まだ空いているスペースがあったという。


 あす霞沢岳を往復して明神まで下るには、10時間のコースタイムである。どうしても、この徳本峠に泊まらなければならない。


 

03-alps-1006m.jpgツェルト(簡易テント)での露営を決断する。いざ、という時のための不時露営の用意はしてきている。しかし、地面に敷くシートや寝袋の用意はしてこなかった。大きな木の下にツェルトを張り、持参した服を全部着込んで一晩を過ごすこととする。


 しかし、夜半に雨が降り出し、標高2135メートルの夜中はさすがに寒く、2時間置きに目が覚めた。


 翌28日は、早々とツェルトを畳み、荷物を置いて霞沢岳へ向かう。標高が低いので樹林帯が長く続き暑苦しい。いくつかのピークを越えて霞沢岳が近づいてくると、稜線の右下に六百山が見えてきた。


 この六百山は上高地に最も近い山なのに、頂上への登山道がなく、自分でルートを探さなければならない。ひと味違った充実感が味わえる山で、私も昨年5月20日に登った。槍・穂高連峰を手が届かんばかりに眺められ、眼下には上高地を見下ろすことができる。だが中畠沢の残雪を利用して登るので、雪の残る2カ月間くらいしか登れない静かな山だ。


 霞沢岳の頂上は西穂高岳、奥穂高岳、前穂高岳、明神岳、そして河童橋の背後に展開する岳沢が美しかった。帰りは往路を戻り、徳本峠に置いていった荷物を持って明神へ下り、スピードを上げて上高地の小梨平テント場まで下った。


 小梨平のテント場は土曜日なので、それなりのにぎわいを見せている。久しぶりにテント場の浴場に入り、さっぱりして、やはりツェルトを張って寝た。標高1500メートルと徳本峠より600メートル低いので、それほど寒さは気にならずよく眠れた。

(2012年10月6日号掲載)


=写真=歴史のある徳本峠小屋

 
北アルプス全山単独縦走