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05 西穂高岳〜奥穂高岳 〜連続する危険箇所 時間かけて慎重に〜

 7月30日。きょうはいよいよ西穂岳から奥穂高岳へ。縦走路としては、国内最難関のコースである。槍穂高間の大キレットや剱岳のカニのタテバイ・ヨコバイよりワンランク上といわれ、小屋から小屋の所要時間は約10時間の予定である。


 幸い好天に恵まれ、星空の下、午前4時に西穂山荘を出発する。山荘前のコース標識に従い、ヘッドライトを頼りに独標を目指す。朝食は早立ちするために小屋では取らず、前夜のうちにおにぎりを作ってもらった。1時間半で独標に到着し朝食とする。


 ここまでは、ガイドに連れられた中高年のツアー登山者が大勢登って来る。登山道や標識のよく整備されたコースだ。ここから1時間半で西穂高岳(2909メートル)に達する。


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 しかし、そこから先は状況が一変する。ガイドブックに必ず書いてある注意点は「初心者のみのパーティーの行動は危険」「単独行は避ける」「悪天候のときには困難度が数倍に増すため、十分に注意するか中止する」。警察も警告のチラシを配っている場所である。私はこのような場所では、高年齢でもあるのでコースタイムより2、3割増の時間をかけるように心掛けている。


 西穂高岳を越えると、急に人の気配がなくなる。道を示す赤や白のペンキ印も途切れ途切れに。しかも、古く薄いものばかりだ。足元の岩もゴトゴトと浮き石が多くなってくる。


 最初の難関は間ノ岳(あいのだけ)(2907メートル)だ。西穂〜奥穂の核心部といえる。山全体が崩れそうなくらい岩が不安定で、瓦が重なったような岩が逆層となっている。


 間天(あいてん)のコルへ下る時は、約30メートルの長い鎖を懸垂下降するように腕力で下る。さらに天狗ノ頭(2909メートル)を越え、さらに天狗のコルへ下る。深いV字状の鞍部で、西穂側のオーバーハング気味の鎖場、奥穂側のルンゼ(岩溝)状の鎖場と、下半身より上半身を使う登山となっている。


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 そして、いよいよ奥穂の前衛峰・ジャンダルムが間近に迫ってきた。縦走路の手前から左へ、岩峰を巻くようにして頂上へ登る。往復20〜30分で、スタンス(足場)の乏しいスラブ(大きな一枚岩)状のコースになっている。


 次はロバの耳、馬ノ背と垂直に近い岩場のトラバースやナイフリッジ、その前後のガラガラの岩の積み重なった尾根を越えると奥穂高岳(3190メートル)が目の前に現れる。危険箇所はひとまず終了となり、緊張感から多少解放されほっとする。


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 しかし、まだ奥穂の下りが待っている。山荘手前のはしごを下り切るまでは、気を抜けない。16時、無事穂高岳山荘に到着。12時間かかったが、危険箇所は意識的に時間をかけて歩いたので、ほぼ予定どおりと満足した。

(2012年10月20日号掲載)


=写真=奥穂高の前衛峰・ジャンダルム



 
北アルプス全山単独縦走