
通称「べついん」「親鸞さまの別院さん」と呼んで市民から親しまれている。善光寺表参道が急になる辺り、北野文芸座の西北にある。 久しぶりに2000坪(6310平方メートル)近い境内を拝見した。豪壮な本堂、庫裏、鐘楼、経営する中央幼稚園の規模に、あらためて憧目した。加えて身長2メートルを超す親鸞の銅像=写真=にも驚く。
--別院とは、どんな意味ですか。
「コンビニでも、フランチャイズ店と本部直営店、経営指導センターなどと分かれているように、浄土真宗本願寺派(通称お西さん)の伝道教化センターでもあるのです。地域の浄土真宗僧侶(院主)が寄り集まり、互いに勉強して切磋琢磨する道場とお考えください」と輪番(トップ)の本川(ほんかわ)道法さん。前任地の北海道・帯広から今春、来たばかりだ。
--輪番とは?
「私は宮崎県生まれで、全国各地のセンターを転勤して歩いています。突然、寺が無住(住職不在)になったりした場合にもリリーフします」
浄土真宗は世界各地に寺や道場を開き、在留者や日系人の心=精神をサポートしている。本川さんは「メキシコ在任14年という抜群のエースなんです」と事務局員さん。
--それにしても親鸞さんの教え"他力本願"というのは分かりにくいですねえ。

「唯一の仏である阿弥陀仏に生き方のすべてをお任せするという意味です。そうすれば浄土に参ることができる...。念仏さえ唱えれば極楽に行けるのではありません。現世の生き方を律すること。火宅から出ることが大切なのです」
--宗教には多神教と一神教がありますが、仏教はどちらですか。
「私どもの浄土真宗では、一神教の範疇と自負しています。たくさんの仏の中から唯一の仏として阿弥陀を選んだのです。他宗派のような勢至とか観音、薬師、文殊、普賢、地蔵などの諸仏・菩薩は一切ありません」
初心者にはいささか難解だが、阿弥陀一本やりなのだ。キリスト教、イスラム教と同じだという。ちなみに多神教の代表はインドのヒンズー教や中国経由のわが日本の神道だ。神道には八百万の神がいる。
この寺の前身は鎌倉時代の1198(建久9)年、善光寺山内に創始された「蓮華院正法寺」という。1871(明治4)年には近代化の先駆けとして長野県学校が設置された。教師は松代藩で学識トップの山寺常山らだった。73年の学制発布で廃校になるが、信州の教育史に一項を添えている。
(2012年10月20日号掲載)