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07 卵集め 〜最初の発見で夢中に 胸躍る"宝石箱"作り〜

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 小・中学生時代の私は、ほとんどの時間を外遊びに費やしていました。休日はもちろん、学校へ行く一番の目的も野球。竹竿に絶縁テープを巻いたバットとテニスボール持参で、始業1時間前には登校し、仲間と校庭で汗を流します。授業で涼むと昼休み。大急ぎでご飯をかきこんで、また校庭へ出る。放課後も同じでした。


 確か4年生の日曜日だったか、湯福神社に遊びに行き、大きなケヤキの木の根元でコバルトブルーの小さな卵を見つけました。まるでトルコ石のような鮮やかさです。思わず手に取ると、草むらが落下の衝撃から守ってくれたのでしょう、無傷でした。


巣探し1人野山へ

 そのとき思ったのは「ここに青いのがあるんだから、どこかに赤も黄色も紫もあるに違いない」ということです。大事に持ち帰ると、注射針で中身を抜き取り、脱脂綿に包んで標本箱に納めました。小さな仕切りが色とりどりの卵で埋まって、宝石箱のようになった様子を想像すると胸が躍ってたまりません。以降、私は野鳥の卵集めに夢中になりました。


 卵を取るには巣を見つけなければならない。当時、昆虫や蝶を追うのが好きな子は多く、特に蝶仲間は徒党を組んで探しに行く傾向がありましたが、野鳥の卵に情熱を傾けていたのは私だけ。一人で野山に入り、藪をくぐって巣を探します。高い木の上にある巣を見つけると、木登りの得意な大竹屋旅館の竹内養輔君に頼んで手伝ってもらいました。


 小・中学生ですから、これが違法行為とは知りません。標本箱にたまっていくのを見ては悦に入っていたのですが、イメージしていたほどカラフルな宝石箱にはならなかった。神社で拾ったのはムクドリの卵。これに似ているジュウイチやコルリはきれいな方で、ウグイスがチョコレート色をしているほかは、たいてい白や薄い茶褐色。鳥の卵殻に付くのは、ポルフィリンという褐色やオリーブ色のもとになる色素と、シアニンという青か緑色のもとになる色素の2種類しかないことを後で知り、期待が裏切られた理由が分かりました。


 こうして高校生になったころには、標本箱2箱分、46個の卵を所有するコレクターになっていました。2年生の時、生物班の発表コーナーで自慢の標本を展示したところ、市内の剥製店の親父さんがやって来て「譲ってくれ」と言うのです。卵の剥製は結構需要がありました。私はもちろん断りました。


剥製店に脅され

 すると態度を一変させ、「お前は自分のやっていることが分かっているのか」と脅しにかかるではありませんか。野鳥の卵を取るのは違法だから、自分に譲らないと長野警察署に訴えると言うわけです。絶対に手放したくない。でも警察に捕まるのも怖い。あのときは半月くらい心底ビクビクしていました。


 この一件をきっかけに、卵の採取をやめました。母にカメラを買ってもらって撮影することで我慢。それから、日本国内で発見されていなかったホシガラスの巣卵が見つかったという報告も打撃でした。未発見の卵を探してやろうと、高校の生物班の仲間と志賀高原や浅間山の天狗の露地を探索してきた苦労が水泡に帰してしまったわけで、さすがにテンションが下がりましたね。


 結局、警察沙汰にはならず、標本は今も大切に保管しています。卵を見つけたときの興奮と、発見への意欲は私の原点です。

(聞き書き・北原広子)

(2012年12月15日号掲載)


=写真=卵集めに夢中のころ(円内中央がムクドリの卵))


 
山岸哲さん