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12 雄山〜剣沢 〜見晴らしよい岩稜線 迫力ある剣岳眼前に〜

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 立山は南から雄山(おやま)(3003メートル)、大汝山(おおなんじやま)(3015メートル)、富士ノ折立(おりたて)(2999メートル)、真砂岳(まさごだけ)(2861メートル)、別山(べっさん)(2880メートル)と続き、立山という山頂はない。雄山の頂上からの展望は素晴らしく、見渡せば槍・穂高、そして黒部の谷の向こうに鹿島槍ケ岳の双耳峰がそびえている。


 雄山を過ぎると観光客の世界から登山者の世界となり、喧騒もなくなる。左下に見える谷間は、氷河時代の爪跡の「山崎カール」だ。20分ほどで大汝山に着く。ここが立山では最高峰だ。黒部湖のエメラルドグリーンの水面が右下にキラキラと輝いて見える。


 しばらくして大汝山の休憩所に着くが、きょうは午後遅く雨の予報になっているので小休止にして先を急ぐ。3000メートルに1メートル足りない富士の折立を過ぎ、見晴らしのいい岩稜線を下る。この稜線は前も後も、右も左も、本当に見通しが良く、眺めのいいコースだ。1時間くらいで真砂岳を過ぎるが、ここから見える後立山連峰の眺望が素晴らしい。


 さらに1時間で別山へ着く。ここで剣岳(2999メートル)が目の前に現れる。岩と氷の殿堂で、登山をする人なら一度は登ってみたい迫力満点の山だ。別山から剣御前(つるぎごぜん)小舎へ下る中間点から右下の剣沢へ下る。ここから見る剣岳もちょっと角度が変わっただけで、また魅力的だ。徐々に霧がかかってきて、それが絵になる。


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 剣沢キャンプ場が遠方に見え始めたころ、雨が降り始めた。雨具を着けるほどではないが、空がだんだん暗くなってきた。きょうは剣山荘まで行く予定だったが、この調子では無理だろう。


 そのうちに本降りになってきたので、別山乗越から剣山荘までの中間点にある剣沢小屋に逃げ込む。剣岳への登山基地として知名度も高く、大正時代から営業している人気の山小屋だ。カールから急峻な谷へと続く地形は雪崩の巣であり、小屋の歴史は雪崩との闘いでもあった。北アルプス屈指の豪雪地で、降雪の多い年には屋根の上に20メートルも積もるという。


 2009年に新築された館内は、雪が多いので水も豊富。浄化槽を使った水洗トイレや男女時間別のシャワー室が設置されている。客室は蚕棚の1人1畳のスペースのみであるが、満員ではなかったので、5畳に3人くらいの割合で余裕をもって眠れた。寝具もブレスサーモという発熱素材を利用したもので、暖かく快適に過ごせた。各部屋には除湿機が設置され、きょうのような雨降りの日に威力を発揮している。


 剣沢には金沢大学医学部の診療所や富山県警山岳救助隊が常駐していて、小屋での食事の前に救助隊員が出張してきて遭難への注意点などを講義してくれた。その話の中で一番参考になったのは、1日の行動で水をどのくらい携行したらよいかで、答えは「体重×行動時間×50」。すなわち、体重60キロの人が1日8時間行動するには、2.4リットルの水を用意しなさい、という計算式が一番頭に残った。

(2012年12月15日号掲載)


=写真=立山連峰の稜線


 
北アルプス全山単独縦走