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13 剣沢小屋〜剣岳〜ロッジくろよん 〜難所連続する剣岳 一気に黒部ダムまで〜

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 8月6日。4時50分に剣沢小屋を出発する。荷物は雨具、昼食、水、防寒具などをサブザックに詰め、ほかの荷物は小屋に預ける。


 一服剣を通過、いよいよルートの核心部にかかる。剣岳は標高が3000メートルに1メートルだけ足りない。この山をこよなく愛する岳人たちが、1メートル以上のケルンを頂上に積んで、国土地理院に対し、剣岳を標高3000メートルにする運動をしたが認められなかったという。


 数カ所の鎖やガレ場を通過し、前剣の頂に出る。ルートは岩稜の連続で、稜線上のピークをクリアするごとに剣の頂が目の前に迫ってくる。前剣の下りで2カ所に鎖が出てくるが、両方とも上りと下りに分かれている。


 いよいよ頂上へのクライマックス、カニのたてばいだ。上りが「たてばい」、下りが「よこばい」と、上り下りのルートが分けられている。前剣の下りの鎖場も上り下りが分けられていたが、このように配慮され、整備されたルートを時間をかけて登ることが安全登山に通じる第一歩だと思う。足場のない所にはボルトが設置されていて、足を確保できる。


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 前剣から1時間半で祠のある剣岳山頂だ。頂上からは360度のパノラマを楽しむことができる。八ツ峰、小窓尾根、源治郎尾根、早月尾根、長次郎雪渓、平蔵谷などが足元に広がる。学生時代に三ノ窓に定着テントを張って登ったチンネ、ジャンダルム、クレオパトラ・ニードル、八ツ峰など思い出の場所が頭をよぎる。


 きょうは一気に黒部ダムまで降りなければならない。休憩もそこそこに頂上を後にし、「カニのよこばい」を慎重に下り、長いはしごを降り、上り下りの違う3カ所の鎖場を降りて前剣に戻った。振り返ると、深田久弥が『日本百名山』でたとえた「鋼鉄のような岩ぶすま」が堂々とそそり立っている。"元気でいて、また来いよ"と私に呼び掛けているように思えた。


 前剣から、まだまだ難所が続く。一服剣まで落石や浮き石に注意して2カ所の鎖やガレ場を通過し一服剣に戻ると、目の下に剣山荘やけさ荷物を置いてきた剣沢小屋が目に入る。ここまでくれば、やれやれだ。剣沢小屋で荷物を受け取り、剣沢を詰めて剣御前を越えると雨が降り出した。雨の中を急ぎ足で室堂平へ飛ばす。


 室堂までは地獄谷経由が最短だが、有害ガス発生のため「立入り禁止」となっているので、みくりが池経由で室堂へ着く。ターミナルで自宅に連絡したり、きょうの宿泊予定のロッジくろよんの予約を取ったりしているうちにトロリーバスの最終便が出てしまった。


 駅職員を必死で口説いて、私1人のためにトンネルの中をマイクロバスで大観望まで飛ばしてもらい、最終便のロープウエーに間に合った。黒部平から1時間、森林帯を下り、ロッヂくろよんに到着したのは17時半ごろだった。

(2012年12月22日号掲載)


=写真=堂々とそそり立つ剣岳


 
北アルプス全山単独縦走