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09 アリストテレスと悪い癖 〜習慣化するマイナスの行為 最初の一歩を踏みとどまる〜

 アリストテレスの続きで、前回とは逆に、精神の「マイナス」方向への「習慣化」についてです。


 目尻に初めて発見したシワ。何とか取り除こうとマッサージしたり、パックしたりして、いったんは消すこともできます。しかし、消したはずのシワはいつの間にか戻ってきます。なぜ、戻ってくるのかといえば、皮膚にシワという癖がついてしまうからです。


 訓練によって、善き行為が習慣化されるように、望ましくない行為も、それが積み重なることによって習慣化します。そして、いったん習慣化されてしまうと、それをやめるためには大変な時間とエネルギーが必要となります。


シワと折り目

 例えば、必要もないのにうそをつく癖。最初のうちは「うそは良くない」「ばれたらどうしよう」とハラハラドキドキするのですが、2回、3回とうそをつき続けるうちに、いつのまにか習慣化して、うそをついても平気になり、やめたくてもやめられないという悪循環が始まります。


 では、悪い癖がついてしまうか否かのターニングポイントはどこにあるのでしょうか? それは、その行為の第1回目にあります。シワの例えに戻るならば、シワが直りにくくなるのは、そもそも最初のシワを防ぐことができなかったからです。


 シワは紙を折るのと同じようなもので、いったん折り目が付くと、その折り目を消すことは困難です。折り紙で作ったツルをいったん開いて、同じ紙で、同じ折りヅルを作ろうとすると、折り目に沿って折ると簡単にできるので、1回目に付いた折り目が繰り返し折られることになります。


 望ましくない行為もこれに似ています。習慣化してしまうか否かは、その行為のそもそも第1回目が行われるか否かがカギになるのです。 子どもたちが何か危ない行為をしようとするとき、ちらりと頭をよぎる、あるいは、その行為を誘う人間が口にする「1回くらい大丈夫」「嫌になったら、いつでもやめることができる」という言葉があります。しかし、一度できたシワ、例えば、麻薬、万引など、最初の1回によって刻み込まれるシワが非常に深く、直すことが大変難しくなる場合も少なくない、ということを教えられている子どもたちはどれほどいるでしょうか。


 子どもたちが悪いことをちょっと試してみたくなったとき、お母さんの目尻のシワを見て、「精神のマイナスの癖」の怖さを思い出し、最初の一歩を踏みとどまることができるとしたら、アンチエイジングの敵であるシワも、あっても悪くない存在になるかもしれません。

(2013年1月26日号掲載)