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15 読売新道〜水晶岳 〜北ア最深部を上る 最高の眺望独り占め〜

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 8月8日。いよいよ北アルプス最深部の奥黒部-赤牛岳(2864メートル)-水晶岳(2986メートル)-水晶小屋へ続く全長11キロ、標高差1500メートル、途中には小屋も水場もない急な上りが続く「読売新道」だ=写真上。


 朝食をおにぎりにしてもらい、5時に奥黒部ヒュッテを出発する。きょうの行動予定は11時間。小屋から赤牛岳までは約7時間上りっ放しだ。読売新道を下る登山者はいるが、上るのはシーズンを通して10数人程度という。この読売新道は上りたくなかったが、全山縦走するためには通らざるを得ないコースなのだ。


 読売新道は読売新聞社が開設した登山道。新道は各所にあるが、ほとんどは山小屋のオーナーが開設し、開設者個人の名前を付けている。企業が開設し、企業名の付いた登山道は珍しい。薄暗い、うっそうとした原生林の木の根と巨石と大木の中を、階段を登るようにして高度を上げていく。時間をかけて、あえぎあえぎ登っていくと段々に明るくなってくる。


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 しばらくして、樹林帯を抜け灌木帯に入り、昼過ぎには草原帯に変わるが、まだまだ上りは続く。周りには高山の花々が咲き、草原の輝きが増し、南に向かって右手後方に剣・立山連峰、その眼下に黒部湖、左手前方には野口五郎岳・烏帽子岳など裏銀座の山々が現れる。読売新道は北アルプスの中央を南北につないでいるので、高度が上がってくると眺望は最高だ。赤茶色の岩石の交じった砂地状の道が赤牛岳山頂へと続く=同下。


 赤牛がどっしりと寝そべっているように見えるのが山名の由来だ。その先の水晶岳は日本百名山の一つなので訪れる人が多く混雑しているが、3時間離れている赤牛岳まで足を延ばす登山者はほとんどいないので全く静かだ。北アルプスの主な山々がぐるりと見渡せる最高の眺望を独り占めして楽しんだ後、水晶岳へ向かう。


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 3時間の稜線歩きは天上散歩のようだが、登山道の周りは砂礫とハイマツだけで高山植物の花が見当たらないのが寂しい。水晶岳は水晶が採れることから付いた山の名前で、昔、水晶採りの人が泊まるための小屋もあったという。別名「黒岳」と言い、深田久弥は水晶岳のことを黒岳と呼んでいる。


 冒頭で北アルプスの最深部と書いたが、この頂上からは人が住む気配のする場所は全く見えず、また人の住んでいる所から、この山は見えない。黒岳と呼ぶのは、山全体が黒くどっしりとしているからだ。黒岳の南には赤岳があり、北から赤牛岳、黒岳(水晶岳)、赤岳と続く。山名のとおり、赤茶、黒、赤黒と3色に変化している、岩質の違う珍しい連山だ。出発してから8時間で赤牛岳、そこから4時間で水晶岳、その頂上から30分、計12時間半で水晶小屋にたどり着いた。

(2013年1月12日号掲載)




 
北アルプス全山単独縦走