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45 『白蛇伝』(1958年) 〜巳年に楽しむ蛇の映画は?

 Q 2013年は巳年。お正月に楽しめる蛇の出る映画ありますか? 


 A 昨年、龍の話を書きましたので、今度は蛇の番ですね。

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 龍もそうですが、蛇についても西洋と東洋ではイメージが違います。ユダヤ・キリスト教の文化の中の蛇は、どうしてもエデンの誘惑者に結び付く悪者になってしまいますが、東洋でのイメージは時に、妖しく艶めくもの、神秘的な力で人間に幸運を与える神聖な存在でもあります。


 ジェニファー・ロペス主演の『アナコンダ』(1997年)のような怖い蛇ばかりを出しているように見えるハリウッド映画ですが、東洋が舞台だと愛すべき蛇も登場させています。


 例えば、『ジャングル・ブック』(1942年、ゾルタン・コルダ監督)。インド出身のサブーが演ずるモーグリが美しいニシキヘビと一緒に泳ぐ場面には、蛇嫌いの人もしばし恐怖心を忘れてうっとりするはずです。でも、同じ原作によるディズニーアニメ版の蛇には神々しさはありません。


 さて、アニメと言えば、日本アニメ史上特筆すべき作品も蛇に関わるものでした。1958年、東映動画製作の日本初のカラー長編劇場アニメーション映画『白蛇伝』です。


 話題をよんだ山口淑子、池部良主演の日本香港合作映画『白夫人の妖恋』(1956年、豊田四郎監督、東宝)と同じく、西湖が舞台の中国民話を基にした物語です。円谷英二の特撮を盛り込んだ東宝実写版があくまで悲劇の恋であるのに対し、ディズニーを強く意識した東映アニメ版は、パンダやレッサーパンダの愛らしい脇役を配し、許仙(シュウセン)と白娘(パイニャン)(蛇)の運命の恋にハッピーエンドを与えました。宮崎駿監督がこの作品に強い影響を受けたことはよく知られています。


 コンピューターなど全く存在しない時代、全くの手仕事で作られたこの作品の志の高さ、技術力、格調には、今も驚かされます。画の格調もさることながら、2人だけしかクレジットされていない声の出演者、森繁久弥と宮城まり子の力量にも感心します。2人のせりふは劇作家・矢代静一の構成によるものです。


 プロのアニメーターがほとんどいなかった時代、わずかの準備期間でスタッフを養成し、機材を開発して、ディズニー作品に比肩するものを作り出そうとした日本アニメ黎明(れいめい)期の人々の熱い思いが伝わります。55年前の熱い「ものづくり」魂に触れれば、夢を持って新たな何かを生み出す糧を得られるかもしれません。


 新しい巳年が良き一年でありますように!

(2013年1月1日号掲載)


『白蛇伝』発売元/東映ビデオ(株) 販売元/東映(株) 4725円 発売中


 
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