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19 針ノ木小屋〜冷池山荘 〜ライチョウと対面 猿の群れにも出合う〜

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 8月12日。きょうも快晴だ。針ノ木岳(2821メートル)の頂上へは針ノ木小屋(2536メートル)から標高差280メートル、約50分の直登だ。その先は赤沢岳(2678メートル)、鳴沢岳(2641メートル)を越えるが、この2つの山の下に大町市扇沢から黒部ダムに向かうトンネルが通じている。


 岩小屋沢岳(2630メートル)を経て、種池山荘まで来ると爺ケ岳(2670メートル)が眼前にそびえている。爺ケ岳は北峰、中峰、南峰と3つの峰が弓なりに連なる珍しい山だ。ここが有名になったのは、この山のハイマツ帯がライチョウの格好のすみかで、北アルプス有数の生息地であるからだ。


 特別天然記念物で、長野県の県鳥にも指定されている。ライチョウのいわれは、天敵や人間に追われ警戒心が強く、雷や霧の時に現れる故といわれてきたが、現在は手厚く保護されて警戒心が薄れ、この辺りではよく出合うことができる。


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 私も好天にもかかわらず、複数のライチョウと対面することができた。5月下旬から6月中旬にかけて産卵し、二十数日でふ化し、今は雌だけが子育てをしている。3〜4匹のひなを引き連れ、親鳥は「クゥ、クゥ」とひなに、ひなは「ピィピィ」と親鳥に自分の居場所を教え、つかず離れずハイマツの実やつぼみを食べながら移動している。7月の下旬に入山したころ出合ったひなは鶏のひよこくらいの大きさだったが、きょう出合ったひなはハトくらいの大きさになっていた。


 きょうは猿の群れにも出合った。広々としたハイマツの樹海が広がる登山道に沿って、10匹くらいの一族がボスらしき体格の猿を先頭に、子猿を背負ったり、子どもの猿が松ぼっくりくらいの大きさのハイマツの実を食べながら、私との距離を一定に保って移動していく。


 猿と出合う前に、登山道にハイマツの実が散らかっていたのを不思議に思っていたが、猿は実の柔らかいところだけを食べて堅いところは捨てていたのだ。15分ほど登山道を一緒に歩いていたが、やがて一族は沢の方へ降りていった。


 爺ケ岳から見る双耳峰の鹿島槍ケ岳は見事だ。足元の稜線の針葉樹林帯の中に、赤い屋根のきょう泊まる冷池(つめたいけ)山荘が見える。その先に布引山(2683メートル)が見え、さらに鹿島槍ケ岳の南峰(2889メートル)と北峰(2842メートル)へ続く稜線がくっきりと見える。


 この付近と白馬岳の稜線は非対称山稜といわれ、長野県側が急激な崖状となって落ち込み、富山県側は黒部川に向かって緩い斜面になっている。同じ北アルプスでも、この辺りから降雪が多くなり、夏でも残雪が多く、白馬、針ノ木などの大雪渓が発達している。このことは里でも言えることで、大町付近を境にして北へ行くほど雪が多くなる。そして雪の多い所ほど高山植物も多く色も鮮やかだ。

(2013年2月9日号掲載)


=写真=爺ケ岳で出合ったライチョウ

 
北アルプス全山単独縦走