記事カテゴリ:

020 ドイツ ローレライ〜ライン下りのハイライト〜

20-binotabi-0223p.jpg

なじかは知らねど

心侘びて

昔の伝えはそぞろ

身にしむ

さびしく暮れゆく

ラインの流れ

入り日に山々

赤く映ゆる


 ドイツ最長のライン川はスイスの山中を源流としている全長1233キロの大河だ。その半分以上がドイツ国内を流れる。"母なるドナウ"に対して"父なるライン"と呼ばれるのは、その猛々しさから。ラインRheinのつづりはRUN(走る)から来ている。


 私たちは、ロマンチック・ラインと呼ばれるコースの一つを取った。「ラインの真珠」とうたわれるリューデスハイム。キルシュガルテンと呼ばれる木組みの家が多い。「ツグミ横町」という小路のホテルに1泊。翌朝、この町から乗船した。ここからザンクトゴアールに至る2時間ほどのクルーズだけでも見どころはふんだんにあった。


 収穫を終え、黄葉したブドウ畑の並ぶ段丘。すぐにねずみの塔やラインフェルス城などが姿を現した。左岸のシュターレック城はいま立派なユースホステルであるし、古城ホテルに再生している城も少なくない。かつては通過する船から通行税を取る目的で乱立することになった生々しい歴史もある。


 途中の駅で乗船してきた若者たちと話が弾む。朝露にぬれた椅子を拭きながら、カメラのシャッター音が途切れない。猫城やねずみ城と、その名も印象的。プファルツ城は中州に建ち、持ち主の好みで船をイメージしたデザインだ。乗船した地元の人は「人から巻き上げた金でぜいたくな城を造った」と冷ややかだった。ハイライトはローレライの岩だ。高さ132メートルの断崖絶壁。語源は「待つ岩」で、こんな伝説がある。


 その昔、7人の乙女が、1人の若い男を魅惑しては裏切った。恋に苦しみ身を投げた若者を悼んだ神は「何と冷たい女たちだ」と怒って岩にしてしまったとか。岩にされた彼女たちは、ここで美しい歌声を使って近くを通る船乗りたちを魅惑し、多くの遭難者が出たという。この言い伝えをハイネが創作したのが冒頭の詩だ。


 むろん、この下のカーブは急流だったのでよく船が転覆したことから、こうしたローレライ伝説が生まれたわけだが、今でもここはライン川で最も深く、水深は50メートルに及ぶ。


 岩の頂上にはローレライの像が建てられているが、船からは見ることができない。ローレライの名曲は、若き日の私がよく口ずさんだものだ。船上から流れるこの曲に胸が熱くなった。

(2013年2月23日号掲載)


=写真=船上から見上げるローレライの岩

 
ヨーロッパ美の旅