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21 キレット小屋〜唐松岳 〜筋骨隆々の五竜岳 残雪で「武田菱」出現〜

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 8月14日。雨音で目が覚める。キレット小屋の朝は他の小屋より早く始まる。それは北(五竜山荘)へも、南(冷池山荘)へも約5時間以上、休憩時間を含めると6〜7時間かかり、道のりも険しく、途中からのエスケープルートなしで事故も多いためだ。小屋は救助隊員の常駐基地にもなっている。


 朝食が終わるころ雨がやみ、空がだいぶ明るくなってきたので、雨具を着て6時に出発する。キレット小屋から五竜岳間はアップダウンが激しく、鎖場も多い。特に五竜岳の上りは急で雨のため滑りやすく、変化に富んだ岩峰が続き気を抜けない。八峰キレットの名の由来は、以前は峰が多く続くためと思っていたが、「猟師の八」が初めてここを通過したことから命名されたという。


 4時間半で五竜岳の頂上(2814メートル)に達する。深田久弥は『日本百名山』で五竜岳を「高さは特別ではないが、山容雄偉、岩稜峻れい、根張りのどっしりした山」と称している。


 私にとっても五竜岳は特別な山だ。八方尾根にスキーに来ると、天気の良い時は必ずアイゼンを付けて八方池まで登り、冬山の景色を楽しむ。右手に白馬三山(白馬岳、杓子岳、白馬鑓ケ岳)、左手に五竜岳、鹿島槍ケ岳の雄姿が目に焼き付いているが、五竜岳は実に堂々としていて筋骨隆々。ひときわ目立つ男性的な山だからだ。


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 山名は、その山の麓によって違った呼び方をされているが、信州では頂上直下に武田家の紋章の菱形「武田菱」が残雪期に現れることから、御菱(ごりょう)がゴリュウに転訛したとされている。越中側では、違った説があるようだ。


 山の頂上には必ず山名と標高を書き込んだ頂上標示杭があり、この辺りは大町市が立てた比較的新しい黄色の杭が立っている。五竜岳の杭にはハングルが併記されている。やはり国際化が進んで、韓国からの登山者が増えているからであろうか。初めて目にした。


 頂上から1時間ほど下り、五竜山荘の前を通過して唐松岳に向かう。14時40分、今晩お世話になる唐松岳頂上山荘に到着する。この山荘は八方尾根をゴンドラで上がり、さらに稜線を登って比較的短時間でたどり着け、北アルプスの絶景を楽しむことができるため、学校登山にも利用されている。


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 受付には「1日限定8食、3000円」の特別メニューの表示がある。もちろん、私にはそんなぜいたくはできないが、参考に尋ねてみると、食堂は特別室で、夕食は10品くらい、デザート付きの純和食が3段の重箱入り。朝食は焼きたてパンをモーニングコーヒーでいただく。どこか都会のホテルでの食事を思わせる豪華版だという。山にもグルメの波が及んで来ていることを実感した。

(2013年2月23日号掲載)


=写真2=男性的な山容の五竜岳

=写真3=キレット小屋

 
北アルプス全山単独縦走