040 胃がんの内視鏡手術 ~腹腔内に内視鏡入れ モニターを見て切除~

 胃がんは、内視鏡技術の発達に伴って早く発見されるようになり、内科で行っている内視鏡を使った治療が普及してきたこともあって、多くの症例の治療が行われています。


 ただ、進行の具合によっては、早期の胃がんであってもリンパ節に転移する確率などが上がるため、内視鏡で胃の内側だけを切り取って治療終了というわけにはいかなくなります。


 一方、外科の開腹手術は、リンパ節や病巣を広く十分に切除できるものの、大きな傷が残ることが問題とされてきました。


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新しい手術の方法

 その間を埋める方法として、内視鏡をへその近くから腹腔内に入れ、中の様子をモニターに映し出しながら胃やリンパ節を切除する方法が開発され、日本や韓国を中心に行われるようになりました。


 小さな4、5カ所の穴から鉗子(かんし)という細長い器具をおなかの中に入れ、リンパ節が入っている脂肪組織や血管をクリップという器具を使って止血した後、大きな組織として切り取ります。また「21世紀のメス」といわれている超音波凝固切開装置を用いれば、小さな血管から4ミリ程度の太い血管までを安全に切ることもできます。


 がんの場所にもよりますが、3分の2程度を切り取った胃の組織を5センチほどの穴から取り出し、残った胃と十二指腸または小腸をつなげて、食事を取れるようにして手術を終了します。


メリットの多い手術

 大きな傷の手術に比べ、この小さな傷の手術では術後の痛みが少ないので、早くから歩くことができますし、早くに食事を取ることも、退院することも可能となります。また、美容的にも優れ、腸閉塞という合併症も少なくなり、患者さんにとって恩恵の多い手術方法です。


 しかし、この方法は技術的に難しく、外科医の修練には時間がかかります。また開腹手術と異なる高価な器具を使用するため、病院側にとっては投資の多い手術という側面もあります。


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 この技術は現在、胆石症から胃がん、大腸がん、肝臓がん、腸閉塞、鼠径ヘルニア、急性虫垂炎の手術などに幅広く適用され、多くの疾患に応用できるところまで来ています。

(2013年2月16日号掲載)


林 賢(外科科長=専門は消化器外科、内視鏡外科、肝胆膵外科)


=写真=開腹手術・腹腔鏡手術

 
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