041 脳腫瘍 ~半数以上は良性疾患 最新機材で摘出手術~

 脳腫瘍は頭蓋内の組織にできる腫瘍を指し、年間で人口10万人に約12人が発症するといわれています。良性と悪性があり、放置すると脳を圧迫し、様々な障害を起こす可能性があります。他の臓器のがんが転移して発症する転移性脳腫瘍もあります。


原因は不明

 発症原因については、はっきりしたことが分かっておらず、予防法もまだありません。症状は頭痛、吐き気・嘔吐、視力低下、けいれん、手足の麻痺など、腫瘍の種類や部位、大きさなどにより様々なものがあります。


 脳腫瘍の主な検査は、CTやMRIによって頭蓋内の縦横の断面の情報を得、腫瘍のある場所、大きさ、周囲の組織との位置関係などを確認します。腫瘍によって生じるむくみ(脳浮腫)の程度や腫瘍細胞の広がりなどの把握も重要です。


 一般的には「脳腫瘍=不治の病」というイメージが強いですが、その半数以上は良性疾患です。しかるべき治療を受ければ根治や長期生存も期待できます。ただし他の臓器の腫瘍と異なり、病理組織が数多くあるため、的確な診断と適切な治療が求められます。


良性と悪性

 髄膜腫や下垂体腺腫、神経鞘腫に代表される良性腫瘍の多くは、脳以外から発生し、ゆっくりと増大し周囲の脳組織を圧迫するのみで、脳組織へは入り込みません。脳組織を強く圧迫するようになると、様々な症状が出ます。


 治療の基本は手術による全摘出。全摘出することで根治が期待できます。ただ、腫瘍の大きさや部位などによっては全摘出が困難で、数回にわたって手術を行わなければならない場合もあります。


 一方、悪性神経膠腫(グリオーマ)などに代表される悪性腫瘍は、脳から発生し、周囲へ広がりながら増殖します。また、周囲の正常な組織との境界が不鮮明で治療が難しいという問題があります。したがって手術のみで根治することは難しく、化学療法や放射線治療なども必要になります。


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 脳腫瘍の手術は、最新の機材や高度な技術を駆使して実施。ナビゲーションシステム(カーナビと同様に、手術する場所を的確に示してくれる)や、術中蛍光診断(特殊な薬とレーザー光で腫瘍を光らせ、正常な部分と区別できる)、神経生理学的モニタリング(手術中に運動や感覚などの神経の働きを調べる)、覚醒下手術(手術中に麻酔を覚まし、手足の動きや言語機能を確認する)などです。こうした方法で、より安全で確実な摘出手術ができるように取り組んでいます。

(2013年2月23日号掲載)


=写真=荻原 利浩(脳神経外科医長=専門は脳神経外科全般)

 
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