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24 朝日小屋〜栂海山荘 〜山小屋で刺し身まで 同宿者が食料を提供〜

 8月16日に宿泊した朝日小屋は朝日岳(2418メートル)の麓にあり、海抜0メートルの日本海、親不知まで27キロ、北アルプス最北の有人小屋だ。


 小屋の受付横には「お疲れ様でした。こんぺいとう、ひと粒どうぞ」と書かれ、疲れを癒やす甘い金平糖が置いてある。ここは「名物おかみ」がいて、女性特有の優しい気配りが感じられる。


 特に、おかみこだわりの手作りの食事が素晴らしい。冷凍食品は使わず、地元・富山で採れた食材を使い、ボリュームとバランスの取れた食事は田舎の家庭料理で、アットホームな味付けは本当においしい。食事の前におかみから、料理の食材や味付けの解説があり、それを聞いてから食べると一段と、おいしくなる。


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 まず食前酒が出され、ご飯は富山県産コシヒカリ100%。時間をかけ、よく煮込んだ手作りの肉じゃがは絶品。そしてみそ汁の具はモズク。富山名物のますずしに加え、何と驚きの「昆布じめの刺し身」が出てきた。デザートは地元銘菓「栂海(つがみ)新道」と、隅々まで気配りされた食事とサービスが、朝日小屋独特の居心地の良さを生み出している。


 同室となった3人の単独行の登山者は、さすがこのような最北の地まで足を延ばしているベテランらしく山の情報が豊富で、私が北アルプス全山縦走を達成して2日後に親不知まで下ることを話すと、自分の食料のほとんどを私に提供してくれた。朝日小屋から先には食料を手に入れる所が全くないこと、25日間山を歩いて来た私には手持ちの食料が皆無なこと、自分たちは下山するので最少の食料を確保すれば我慢できること等々で、私の縦走を自分のことのように喜んで祝ってくれた。


 8月17日。5時30分に、この小屋独特のおぼろ昆布のおにぎりを持って出発する。富山県は昆布の消費量が日本一で、コンビニではおぼろ昆布のおにぎりが定番だという。


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 1時間ほどで朝日岳の頂上に着く。ここから親不知までが、北アルプスから日本海へ、山から海へ通じる、「栂海新道」だ。「稜線から日本海が見える」「変化に富んでいる」「人とほとんど会わない」。1971(昭和46)年、地元の「さわがに山岳会」によって10年かかって開通した。


 途中、ほぼ中間点にある犬ケ岳(1593メートル)まで高山植物の群落や湿原の花が次々に現れる。「高山から亜高山帯、低山まで、様々な植生が見られる自然の宝庫」だ。稜線から下はブナの原生林で、このコースを歩く登山者は他の高山をほとんど踏破して最後にやって来るケースが多い。今夜泊まる栂海山荘は中間点の犬ケ岳頂上直下にある無人小屋で、年間400〜500人が宿泊するという。

(2013年3月16日号掲載)


=写真=北アルプス最北端の朝日小屋

 
北アルプス全山単独縦走