042 手根管症候群 ~親指から薬指にしびれ 冷やさず使い過ぎず~

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 手根管症候群は、手の付け根の8個の手根骨のアーチの中を走る計9本の屈筋腱が、加齢や使い過ぎによって腱鞘炎を起こし、一緒に走っている正中神経を圧迫し、神経が阻血されて起こす病気です-といっても分かりにくいですね。


 かみ砕いて説明すれば、40〜50代以上の手をよく使う女性で、両手の(ときには片手の)親指から薬指の親指側の半分までの手のひら側にしびれがあれば、まずこの病気と言って過言ではありません。


 ここで注目すべきは、薬指の小指側の半分と小指にはしびれがないことです。しびれの範囲が薬指で分かれたら、手根管症候群です。中年女性に限らず、比較的若い男性でも肉体労働者に多く、妊婦にも多いとされています。


原因は手の使い過ぎ

 治療はどうすればいいのでしょうか。神経の血行が悪くならないように、まずは手を冷やさないように心掛けてください。ずっと同じ格好をしていることも、手にとって良くありません。


 次に、手を大切にして使い過ぎないことです。しかし、まったく手を使わずに生活できる人はいません。しっかり安静にしていただくために手関節を固定する装具を用いたり、手根管内の炎症を鎮めるために注射をしたり、痛みを抑えて神経の回復を促すために薬を飲んだりします。


様々な手術が

 それでも、なかなか症状が治まらない場合や、親指の付け根の筋肉が萎縮してしまった人には、どれだけ神経が弱っているのか確認するために、神経伝導速度の測定をすることがあります。


 神経伝導速度がひどく低下していたり、症状が進んでしまった人のためには手術があります。手根管の直上から広く開いて行う手根管開放術、一部の皮膚切開で行う小皮切手根管開放術、内視鏡で行う鏡視下手根管開放術、腱を入れ換える腱移行術など、術式は多彩です。


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 それぞれに実績のある良い手術ですが、一長一短があるので、お近くの手外科専門医にご相談ください。

(2013年3月9日号掲載)


=写真=松田 智(整形外科部長=専門は上肢外科、末梢神経、マイクロサージャリー)

 
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