記事カテゴリ:

47 「男はつらいよ」(1969〜95) シリーズ長期化の秘密は?

47-kinema-0302p.jpg

 Q 寅さんの『男はつらいよ』のような長期シリーズ化される作品と、そうでないものの違いは? 


 A 同じ監督、同じ主演者ということで言えば、1969年から95年までに48作という『男はつらいよ』シリーズはまさにギネス記録、驚異的な存在です。


 例えば、007の映画は番外編を入れて25本ほど作られていますが、ショーン・コネリーとロジャー・ムーアがボンドを演じたのがそれぞれ7本。同じ監督で作ったものは5本が限度ですから、渥美清、山田洋次のコンビのすごさがわかります。


 娯楽作品がヒットすると、続編も期待できるということでシリーズ化しようという話になるわけですが、およその状況設定が同じで登場人物が異なるものと、同一の主人公で新しい状況設定という場合があります。後者が選ばれる場合は、キャラクターに特別の魅力があるということでしょう。


 多くの俳優が演じている007シリーズの場合、銃口から覗く冒頭シーンや小道具、「ボンド、ジェームズ・ボンド」の決めぜりふなどを今度はどう使うのかといったことが、観客の楽しみになるわけですが、同じ俳優によって演じられる『ロッキー』や『ダーティ・ハリー』の場合、愛すべきキャラクターの成長や変化を見ることが楽しみの一つとなるわけです。


 主人公の成長を見るとなると、ロッキーやハリー、邦画『踊る大捜査線』の青島刑事の例をみても、5本程度が限界のようです。ブルース・ウィリス演じるジョン・マクレーン刑事は現在、5本目。おなじみの設定は、最悪のタイミングで災厄に巻き込まれること。今回は、大人になった息子のためにロシアで「ダイ・ハード」な状況になっていますが、せいぜいあと1本が限界といううわさです。


 寅さんが常識の10倍近い48作も続いた理由は、この成長に関わることだと思います。


 シリーズ中、信州が画面に登場するのは『寅次郎純情詩集』『寅次郎ハイビスカスの花』『寅次郎あじさいの恋』『寅次郎サラダ記念日』の4本だそうですが、その間だけでも12年間。寅さんは、京マチ子、浅丘ルリ子、いしだあゆみ、三田佳子と恋に落ちては失恋という行動を繰り返し、その習性を知っていながら、周囲のおじ夫婦や妹夫婦も同じ心配と行動を繰り返しています。


 シリーズの中で、確実に成長を示すのは甥の満男だけなのです。「それを言っちゃあおしめぇ」かもしれませんが、寅さん長寿の秘訣は、寅さんが決して成長しないことにあったといえるでしょう。

(2013年3月2日号掲載)


=写真=『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』発売・販売元/松竹

DVD発売中 3990円 (C)1976松竹株式会社


 
キネマなFAQ