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24 皇族と一緒に 〜気配りの紀宮さま 品格の秋篠宮さま〜

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 日本一偉い部下の紀宮さまと、日本一偉い上司の秋篠宮さまの間でサンドイッチになっていたのが山階鳥類研究所の所長時代です。精神的な負担はかなりなものでしたが、得難い経験をさせていただきました。


 紀宮さまは非常勤研究員として週2回出勤され、コツコツと地道な研究をされていました。細やかな気配りをなさる方で、例えばご結婚が内定して送別会の日が決まると、事前に私宛てにメールをくださいました。大勢集まる送別会当日では挨拶がしにくいだろうからと、心のこもったお礼の言葉がつづられており、感慨深く何度も読み返しました。


 手料理やワイン、お酒を持ち寄って開催した送別会の席では、緊張で何を申し上げたかはっきり覚えていないのですが「私はオシドリは浮気をするかというような本を出しておりますが、それは鳥の話。どうかすてきなオシドリ夫婦になってください」というような内容だったと思います。


 巨大卵を共同研究

 秋篠宮さまとは、総裁と所長という関係で仕事上の関わりが深いのに加え、共同研究でもご一緒させていただき、共著の論文もあります。ナマズの研究で知られる宮さまですが、学位論文のテーマは実はニワトリですし、国際的にも評価の高い論文を発表されている鳥類学者でもあります。


 私たちが宮さまと立ち上げたのは、マダガスカル島から出土するエピオルニスというダチョウに似た巨鳥の世界一大きな卵についての総合研究プロジェクトでした。宮さまは大きなものがお好きで、メコン川のナマズも世界一ですし、お部屋に納め切れないほど大きな瓢箪(ひょうたん)もお持ちです。私にとっては、小鳥の卵が鳥研究の入り口で、出口が世界一大きな半化石卵。卵と歩んだ半生だったようです。


 宮さまは、総裁というお立場に象徴としていらっしゃるような方ではなく、毎月の定例所員会議にも出席され、しかも「それでよろしゅうございましょう」などと形式でおっしゃることは一切ありません。はっきりと厳しいご意見を述べられるのが常でした。


 寄付集めにも多大なご尽力をいただきました。開かれた研究所を目標に、私が設置した委員会に各界の人材を委任する際も宮さまのお名前をお借りしました。おかげで断わられる方は一人もいませんでしたが、宮さまには過重な負担をおかけしたかもしれません。 


 宮さまは飲みながらのコミュニケーションも大切にされる方です。私も酒は嫌いではないのですが、宮さまととことん飲むには実力が違い過ぎました。そんな時に宮さまがおっしゃったことで印象に残っているのは「所長は品性は悪いが品位はある」とのお言葉です。


 品性というのは、口が悪かったり身だしなみが良くなかったり酒癖が悪いなど、いわばうわべのこと。品位は自分のこと以上に組織、他人のことを考えることで、組織の長として必要な資質と理解しました。さらに宮さまご自身は、私などが及びもつかないその上の「品格」をお持ちでした。


 希少鳥類の保全に力

 研究所は寄付金で成り立っていたので、公益財団法人として社会貢献が求められます。これまで私がやってきたような純粋な生態学研究は、なるべく他の研究機関に任せるとして、アホウドリやヤンバルクイナに代表される希少鳥類の保全研究に力を注ぐようにしました。それがまた、次の段階のトキやコウノトリの野生復帰の研究に発展します。

(聞き書き・北原広子)

(2013年4月20日号掲載)


=写真=当時の職員と

 
山岸哲さん