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26 連載を終えて 〜25日間歩き達成感 自然の豊かさ実感〜

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 「古来、稀」といわれる古希を迎え、自分の70年を振り返り、仕事のほかに何か語れるものがあるだろうかと考えた。今やっておかなければ後悔することに、あれもあれば、これもある。そんな思いと自分らしい達成感を味わえることとして「北アルプス全山縦走」を数年前から考えてきた。


 北アルプスとはどの範囲か? 過去にどんな記録が残っているか? 目標達成のためには、どんなトレーニングが必要か? どんなコースを歩き、途中で中止する時のエスケープルートは? 幾つかの問題点を考えた。


 2000年7月、山岳雑誌の「山と渓谷」社が創刊70周年イベントとして、記者、山岳ガイド、カメラマンら数人で班を組み、それぞれの班がリレー式につないで32日間、延べ30人ほどで北アルプスを縦走した記録を記事にしている。しかし、全コースを通して歩いた人はいないようだ。


 過去に縦走路の一部をこま切れに歩いた経験はあるが、この計画に同行者を得ることは不可能だった。単独行は危険であり、何かあった時には無謀だと非難されることを覚悟で梅雨明けを待って出発した。


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 25日間歩き通して最も強く感じたことは、日本は狭い島国でありながら何と自然豊かな国なのかということだった。北アルプスという山脈の中に、南部には槍・穂高を中心とする岩稜の山々があり、立山近辺には氷河もある。北部には多くの雪渓が残り、その周辺にはかれんで美しい高山植物の花々が咲き誇る。北部と南部では違った花と出合え、地域固有の花も多い。


 標高が少し下がればシャクナゲやハイマツ、常緑針葉樹林に覆われている。そして、あちこちに池や池塘(ちとう)が点在している。外国の山々を歩いてきた友人も、こぞって日本の山の美しさを賞賛している。


 スポーツとしての登山は他に類を見ない特徴を持っている。幅が広く、奥の深い総合的な生涯スポーツだ。


 第一に、若い人から熟年者まで、誰もが楽しめる。第二に、勝ち負けのないスポーツである。それ故に相手との軋轢が少なく、自分も必要以上に無理をしなくて済む。第三に、体を動かすだけでなく、文化・芸術と組み合わせて楽しめる。


 私は今、登山と一緒に写真を楽しんでいる。家に帰って一回の山行で10〜20枚の写真を選び出し、それを何回も見返し、さらに絞って3〜4枚を大伸ばしにして山の好きな友人たちに差し上げている。


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 また、コカリナを持参し、大自然の中で「故郷」などの曲を吹いている。さらに自分で焼いた小さな茶碗と茶道具を携行し、頂上で抹茶をたて一服を楽しんでいる。こんな楽しみ方ができるのも登山の特徴であり、楽しみが数倍に増える。


 天気の良い日には、近くの里山に足を延ばすと気持ちが晴れ晴れとし、持参のおにぎりも殊更おいしく感じられるだろう。夏の一番天候の安定する時季に(一般的には8月の第1週)3000メートル級の山に登れば達成感もあり、自然の素晴らしさを味わえる。私もこれからは、無理をしないで山を楽しもうと思う。

(おわり)

(2013年3月30日号掲載)


=写真上=雪倉岳より後方の白馬岳(左)を望む

=写真下=入山前と入山後の私

 
北アルプス全山単独縦走