「睡眠時無呼吸症候群」の人には、いびきや不眠、日中の強い眠気、起床時の頭痛といった症状がみられます。疾患の定義は「10秒以上持続する無呼吸が7時間の睡眠中に30回以上...」とされますが、一言で言うと、睡眠中に無呼吸を繰り返す病態の総称です。
放置すると危険
原因によって中枢性、閉塞性、混合性に分類されますが、そのほとんどは上気道の閉塞に起因する閉塞型睡眠時無呼吸症候群です。これは眠っているときに舌や喉付近の筋肉が緩み、重力で垂れ下がることによって、空気の通り道である気道が狭くなることで起こります。肥満体形の人、首が短く太い人、顎が小さい人がなりやすいといわれています。
ほかの病気のように熱や痛みを伴わないため、気にされず放置されがちです。しかし症状が進むと、無呼吸により夜間に度々目覚め、眠ったにもかかわらず疲労感が取れなかったり、日中の眠気による仕事のミスや、学業不振を来す場合があります。また、交通事故発生率が正常な人の約7倍も高くなったり、体の酸素不足を補うために心臓の仕事が増え、高血圧や不整脈などの原因となることもあります。
1泊入院で検査
診断には「ポリソムノグラフィー」という検査を行います。通常1泊の入院で、夜間睡眠中の脳波、心電図、胸腹部の動き、鼻口での空気の動き、酸素飽和度などを調べます。
閉塞型睡眠時無呼吸症候群の治療は、軽症であればまず生活習慣の改善で様子を見たり、歯科装具による治療を行います。横を向いて眠ることで、喉が垂れ下がることによる気道の狭まりを軽減させることができます。肥満が病気の一因となっていることも多く、肥満の人は減量が必要です。アルコールの摂取も無呼吸を悪化させる要因となるため、控えた方がよいでしょう。
中等症以上では、持続気道陽圧(CPAP)療法が選ばれます。これは、就寝時にマスク付きの装置を着用する方法です。鼻マスクを介して圧力をかけた空気を送り込んで気道を広げ、無呼吸の発生を抑えます。初めは違和感があるかもしれませんが、この治療を始めてからよく眠れるようになり、「いびきをかかなくなった」「日中も眠くならず仕事にも集中できるようになった」という患者さんの声が聞かれます。
アデノイドや扁桃肥大などが原因となっている場合には、耳鼻科の手術を行う場合もあります。

いびきや不眠、日中の強い眠気、起床時の頭痛-これらの症状が気になる人は、一度医師に相談してみてはいかがでしょうか。
(2013年4月20日号掲載)
=写真=吉池 文明(呼吸器内科科長=専門は呼吸器)