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48 「ローマ法王の休日」(2011) 〜コンクラーベの映画は?

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 Q 先ごろ話題を呼んだローマ法王選び(コンクラーベ)の様子を描いた映画はありますか? 


 A 法王は教会の立場からは「教皇」と表記されます。国王のような政治権力者ではなく、教えの指導者という意味です。古典映画『クォ・ヴァディス』に登場する殉教者・聖ペトロの後継者ですから、映画にもあまた登場します。選挙で思い浮かぶのは、まず、『栄光の座』(1968年・米国)です。


 国際政治状況が混沌とする中、ソ連首脳(ローレンス・オリビエ)の思惑で、シベリア強制労働から解放された政治犯の司教(アンソニー・クイン)が数百年ぶりに非イタリア人教皇に選ばれるという物語です。


 原題の「漁夫の靴」は、元漁夫であった聖ペトロの後継者の意味です。その靴を履くにふさわしい人物を選ぶことは難しく、映画の中でも選挙結果を知らせる白い煙は容易には上がりません。


 もう一本は、一昨年のイタリア映画『ローマ法王の休日』です。監督は『息子の部屋』で知られるナンニ・モレッティ。


 映画の導入は「コンクラーベ」と呼ばれる教皇選挙。枢機卿たちが鍵のかかった部屋に閉じこもって、互選の選挙を始めます。枢機卿たちの心の祈りはただ一つ「私が選ばれませんように」ということ。ご多分に漏れず、選挙は難航し、どうしたわけか、全くのダークホースのメルヴィル枢機卿が選ばれてしまいます。


 予想外の成り行きに職務を引き受けてしまうもののパニックを起こし、バルコニーの新教皇を待ち受ける民衆の前に出ることもできず、引きこもってしまいます。秘密裏に精神科医が呼ばれますが、やがて新教皇は教皇庁を抜け出しローマの街をさまようことに。警備主任はスイス衛兵を窓際の替え玉にして、時間を稼ぎますが...。


 このコメディーで戯画として描かれるバチカンは決して現実のものではありませんし、監督もどちらかといえばカトリックに批判的な立場です。しかし、この映画は監督自身も語っているように、必ずしも単純な宗教批判映画ではないと思います。


 大きな責任を与えられた人間がその重さにおののき、真摯に自分自身に向き合う姿が共感を持って描かれています。何より1925年生まれのフランスの名優ミシェル・ピコリの味わい深い演技が心に染みます。


 『栄光の座』では史上初のポーランド人教皇誕生を、『法王の休日』では600年ぶりの退位を、映画は現実を先取りしていたともいえそうです。これらの映画を見れば、新教皇が人間味を持ったもっと身近な存在として感じられるかもしれません。

(2013年4月6日号掲載)


=写真=『ローマ法王の休日』発売元/ギャガ 販売元/ハピネット DVD発売中3990円

(C)Sacher Film.Fandango.Le Pacte.France 3 Cinema 2011

 
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