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026 フィレンツェ バルジェッロ美術館 〜垂涎の彫刻並ぶ"宝の山"〜

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 ここは彫刻美術館だ。日本人観光客は少ないが、"宝の山"である。玄関ホールには、まずミケランジェロ展示室がある。サテュロスを引き連れたローマのワインの神「バッカス」=写真右。ミケランジェロによる最初の大作だ。ほかに「ブルータス」「アポロ」「聖母子」や、チェッリーニ作「コジモ1世」などトスカーナ彫刻が並ぶ。


 2階のロッジア(開廊)に上がれば、彫刻ファンならずとも垂涎(すいぜん)の作品群が目の当たりに。特にドナテッロの作品に目を見張る。聖ジョバンニ洗礼堂の天国の門のコンクールで優勝したギベルティの下で学び、ドゥオモの天蓋(てんがい)を設計したブルネレスキとも親交があったドナテッロ。首尾一貫して生身の人間を彫り込むことを貫き、見事な精神性が発露されていることで評価が高い。「ダビデ」「聖ゲオギリウス」が展示されている。


 クライマックスはベロッキオの作品だ。ベロッキオとはイタリア語で"本物の目"。彼はドナテッロから彫刻を学んだ。15世紀後半には、フィレンツェで最も繁盛した工房の一つを経営。メディチ家や顧客のための彫刻や絵画を制作した。


 自らも加わった「キリストの洗礼」(ウフィッツ美術館蔵)は、左下の2対の天使をレオナルド・ダ・ビンチと並んで描いた。ダ・ビンチの方が優れていて、ベロッキオは2度と絵筆を執らなかったとの逸話が残るが、実際は以後レオナルドを信頼して絵画は一任し、彫刻に専念したというのが真相のようだ。


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 従ってベロッキオは彫刻家としての名声が高い。バルジェッロ美術館にある「ダビデ像」=同下=と近くのオルサンミケーレ教会にある「トマスの懐疑」が代表作だ。「イルカと天使」もよく知られている。


 彼の人柄と実力を示す事実として、弟子にダ・ビンチのほかボッティチェリやミケランジェロの師匠・ギルランダイオらそうそうたるメンバーがいる。14歳で入門したダ・ビンチはこの工房が気に入り、独立できるようになった後もここで工学技術など多くの分野の基礎的知識を学んだようだ。「ダビデ像」のモデルは若きダ・ビンチともいわれる。

(2013年5月4日号掲載)

 
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