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027 フィレンツェ カメオ 〜色のコントラストで気品〜

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 カメオは、一般に貝殻に浮き彫りしたシェルカメオや、メノウ、大理石などに浮き彫りしたストーンカメオ、最近ではアクリル樹脂で成形したアクリルカメオや金属製のメタルカメオなどがある。近年、貝殻のカメオにダイヤモンドやルビーなどを装飾したカメオ・アビレも登場した。


 私はシェルカメオにこだわっている。花の聖母教会から徒歩1分のカルツァイウオーリ通りに私のお気に入りの店がある。160年前から続く老舗で、以前は小ぢんまりした宝石専門店だった。初めて立ち寄って買ったカメオが気に入ったうえ、夫婦の人柄の良さに引かれて、フィレンツェを訪ねるたびに顔を出している。


 店は今や五つ星になった「ジュエリー・マネッティ」=写真下。主人はガブリエレ、奥さんはジョバンナ。娘は2人で、妹のサラがデザイナーとして活躍。日本の湯飲み茶わんが好きな姉のエリーザとの、文字通りの家族経営だ。


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 2度目に訪ねた時、主人が奥から小箱を持ってきた。シェルカメオの"正体"を見せるためだった。巻き貝だとは知っていたが、サンプルとして保管してある実物の貝は10センチほどの美しい巻き貝で彫刻が施されていた=同上。「商品にするにはもっと何倍も大きな貝でないといけない。それだってカメオ1枚がやっと作れるだけ。だから失敗は許されないんだ」と丁寧に教えてくれた。そして、そのサンプルの貝を土産としてくれた。


 これまで家内や娘に買ったのは、アンティークカメオばかりで、古典的な女性の顔の浮き彫りが好みだ。図柄は、三美神や馬、花などいろいろある。


 現代では、大きな巻き貝が減少したこともあり、カメオ製作所が減少。シェルカメオはナポリのトーレ・デル・グレコの製品が中心だ。現代カメオ彫刻作家の作品は、カメオ専門店「アートフリーチェ」で作品ごとに区別されている。貝殻の色の異なる層を使って美しいコントラストを出す技法は、その伝統もあいまって気品に満ちている。


 映画界には「カメオ出演」という言葉がある。脇役ながら独特の存在感を見せるシーンで、映画監督のヒッチコックらがさりげなく出演する例などだ。由来は、遠目からもはっきりとわかる装飾品のカメオのようだということらしい。

(2013年5月25日号掲載)

 
ヨーロッパ美の旅