5月最後の日曜日に浅間山に登った。私は13年ぶり3回目だが、同行のS君は初めてで念願の山だった。

朝6時に長野を出発。上信越道を小諸インターで降り、浅間サンラインからチェリーパークラインを上り、登山口の天狗温泉浅間山荘へ。11日に山開きがあり、人気の山とあって山荘前の駐車場は1台分が空いていただけ。
身支度を整え、まばゆい新緑の中を8時に歩き始める。一の鳥居を過ぎ、落差10メートルほどの不動滝へ。道端では鮮やかな青紫色のタチツボスミレが迎えてくれる。二の鳥居を経て急勾配の長坂を登り詰めると、眼前に牙山(ぎっぱ)の大岩壁が現れる。

間もなく沢から昇る火山ガスの臭いが鼻を突く。後続のカップルの「いる、いる」の声に振り向くと、黒斑山(くろふやま)から続く尾根の岩壁中腹に丸々としたカモシカが1頭。悠然とこちらを見ている。
ほぼ中間点の火山館に10時に到着。小諸市営の休憩・自然観察施設で、1階は緊急避難用のシェルターになっている。一休みした後、天然カラマツの樹林帯を抜けると、気持ちの良い草原が広がる。
「湯の平」と呼ばれる一帯で、西側は黒斑山から蛇笏岳(だこつだけ)、仙人岳などの第1外輪山に囲まれた火口原だ。初期の大噴火で山体が崩壊し形成された日本離れの光景に目を奪われる。

しばらく進むと、火山岩が転がる賽ノ河原へ。道の両脇には、白にピンクが交じったミヤマアカバナの細かい花が咲き乱れる。この辺は高山植物が多い。
高度が増すと岩と砂礫だけになり、胸突き八丁をあえぎながら登る。突き当たった地点が浅間山本体(釜山=2568メートル)への登り口だが、今は登山禁止となっている。右へ折れて第2外輪山の前掛山(2524メートル)を目指す。
前掛山の山頂からは南側も開け、小諸から佐久平を一望。東側は目の前の釜山から噴煙が上がる。よく見ると、登山規制を無視して登頂している数人の人影が。西側は第1外輪山の岩壁と湯の平を見下ろすパノラマだ。

山頂は風があるため、少し下った所で昼食に。ガスコンロで湯を沸かし始めたところ、ポツポツと雨が当たり始めた。やみそうもないので、近くのシェルターの中に逃げ込み、ゆっくり昼食。
雨具を着て小雨の中を帰路に。湯の平の樹林帯へ入ると雨も気にならなくなり、雨具を脱ぐ。気が付くと周囲にはまだ山桜の名残の花が。火山館で休んだ後、長い道のりを一気に登山口へ。景観も天気も変化に富んだ山行だった。
(2013年6月15日号掲載)
=写真1=前掛山から望む湯の平と第1外輪山
=写真2=シェルターの上が前掛山
=写真3=目の前で噴煙を上げる釜山