甲状腺は喉にある小さな臓器です。甲状腺ホルモンを分泌し、体の代謝を調節しています。甲状腺の病気では、腫瘍と、甲状腺ホルモンの高値または低値が問題となります。
甲状腺の腫瘍では、チェルノブイリ原発事故の後、小児甲状腺がんが増えたことが知られています。
甲状腺ホルモンの値が上がる病気としては、歌手の絢香さんが2年間バセドー病の治療で活動を休止したことが有名です。
値が下がる病気では、五輪陸上金メダリストのカール・ルイスさんが甲状腺機能低下症の治療をしていることが知られています。
甲状腺がん
初めに甲状腺の腫瘍について説明します。甲状腺の結節(しこり)は成人の6.6%に認められ、そのうち10%ぐらいにがんが見つかるといわれ、決して低い数字ではありません。近年、触っても分からないような、小さな結節がたまたま発見されることが増えてきました。
甲状腺の腫瘍は一般的に、大きくなるスピードがとてもゆっくりです。がんであっても、5〜10年という期間、ほとんど大きくならないこともよくあります。
診断は、甲状腺超音波検査と採血検査で行います。悪性が疑われるときには、超音波で結節を確認しながら、針を刺して甲状腺の結節から細胞を採取し、悪性細胞があるかどうか検査をします。
がんと診断された場合は、基本的には手術をお勧めしています。しかし、高齢の人や体力が低下している人は進行がゆっくりなので手術をせずに経過を見る場合もあります。
ホルモン産生の異常
甲状腺が働き過ぎて、甲状腺ホルモンが過剰につくられているとホルモン値が上昇します。値が上がる病気としてはバセドー病が最も多く、ほかに亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎や、甲状腺結節がホルモンを産生している場合などもあります。
検査は、採血によるホルモン検査を中心に、甲状腺エコー検査、甲状腺シンチ検査などを行います。
バセドー病の治療はまず抗甲状腺薬の服用を選択しますが、放射性ヨードが入ったカプセルを飲むアイソトープ治療や、外科手術なども選択されます。

亜急性甲状腺炎では副腎皮質ホルモン剤などを使い、無痛性甲状腺炎では副腎皮質ホルモン以外の薬物療法が基本となります。ホルモンを産生している甲状腺結節は外科手術が基本ですが、患者さんごとに薬やアイソトープ治療などを選択する場合もあります。
(2013年6月22日号掲載)
=写真=西井 裕(内分泌・代謝内科部長=専門は糖尿病、内分泌・代謝疾患)