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15 ピアジェと発達段階 〜成長の段階を無視 子どもも親も苦痛〜

 「ゼロ歳からでは遅い!」など、「早期教育はいいことだ」「幼児教育こそが秀才、天才を作る」というように考える風潮は、今では珍しいことではありません。しかし、それは本当でしょうか?


 大人とは異なる「子ども時代」の存在を発見したルソーに続いて、心理学者のピアジェは、子どもの心身の成長には段階があることを明らかにし、教育学者のモンテッソーリやエルカインドらは、それぞれの発達の時期に適した教育を行うことの重要性と、それを無視した教育が引き起こす問題を指摘しています。


時期に適した教育

 「オムツを早く外すことが、母親の責任であるような気がして、1歳を過ぎたころから躍起になってトレーニングをしたがうまくいかず、諦めた。しかし、2歳を過ぎたら数日で、あっという間にオムツは取れた。あの時の苦労は何だったのだろう」というような話を見聞きします。


 もう一つの例。おもちゃで遊んでいる2,3歳の幼児からおもちゃを取り上げて漢字の「犬」のカードを見せ、「これはね、『いぬ』っていう字なんだよ、言ってごらん」「い...にゅ...」「そうじゃなくて、い、ぬ」「い、ぬ」「そうそう、はい、もう一度言って。い、ぬ」「い、ぬ」--というようなやりとりを多大な時間をかけて繰り返す。でも、なかなか覚えない。ところが、そんな訓練をしてこなかった隣の子が、小学校に入ったらあっという間に漢字をすらすら覚えていくのを見てがくぜんとする。


 なぜこのようなことが起こるのでしょう。

 それは、子どもが、あることができる段階に達していないときに、それをさせようとすると、可能ではあっても大変な無理が掛かります。対して、その動きができる段階に達していると、容易に理解、習得が進むからです。


 動物の調教と同じで、アメとムチでお尻をたたけば、どんなに小さくても、子どもはスポンジのように、何でも吸収していく--という考え方があります。


 しかし、このような考え方に影響されて、お子さんの成長の段階を無視し、早く早くと追い立てると、子どもも苦痛、親も苦痛。そして、親の口からは「いくら教えても分からないんだから、ダメだなあ」というような、ため息交じりのセリフがこぼれる結果となります。実は、ダメなのはお子さんではなく、発達には段階があることに気付かないお母さんの方である可能性あり、なのです。


 「早くオムツを取らなくちゃ」「早期教育をしなくちゃ」と焦る気持ちが出てきたら、大人になってから「私は、1歳でオムツが取れましてねえ、エヘン」ということが自慢になるかどうかを想像してみてください。

(2013年7月27日号掲載)

 
続・たてなおしの教育