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030 クロアチア ザグレブ 〜歴史の街で生まれた友情〜

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 「クロアチアの首都を知ってる?」と聞かれ、日本人の何人が「イエス」と答えられるだろうか。私も最近までは「ノー」だった。


 クロアチアにはオーストリアのフィラッハから電車で入っていった。第一印象は大切だ。スロベニア入国のパスポートチェックで高圧的だった警官に比べ、親切なクロアチアの警官に共感を覚えたことが、この国に対する第一印象だ。


 首都ザグレブの中央駅。そこからイエラチッチ広場へ。国民的英雄イエラチッチの騎馬像がある広場は、サッカー場大の街のへそだ。ザグレブの語源は"溝"とか"堀"を意味したように、小高い丘から旧市街を見下ろすと、広場はまさに溝のように低くなっている。西に隣接するのが花市。鮮やかな色と香りを漂わせ、この国が平和であることを感じさせる=写真上。


 階段を上ると、そこは旧市街地。青果が並ぶドラツ市場はザグレブの胃袋。季節の果物や野菜であふれ、市民が食材探しに余念がない。この国が旧社会主義国だったことを思い出させるのは、一角にある土産物売り場にロシアの民芸品「マトリョーシカ」が並んでいたこと。


 旧市街には歴史を感じさせるものが多い。まず「石の門」。この城門は1731年の大火で焼け落ちたが、ここの聖母マリア像は無傷だったことから、門の中にある小さな祭壇で手を組み祈る市民に心を打たれる。国を超えて、人々が真摯(しんし)に祈る姿ほど美しいものはないと思う。


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 聖マルコ教会は屋根が特徴だ。赤茶色と群青色のタイルで、右にザグレブ市、左にはクロアチア王国・ダルマチア地方・スロベニア地方の紋章が描かれている。片道30秒、60円の世界で最も短いケーブルカーに乗れば、すぐ前はロトルシュチャク塔。13世紀に建てられた見張り塔で、正午に鳴らされる大砲の音に度肝を抜かれる。


 再びイエラチッチ広場に戻り、案内所前の青いプチ・トランに乗る。20人乗りの観光列車(といってもゴムタイヤのバス)だ。


 ここですてきな出会いがあった。私たちの前に座った家族は祖母と孫娘とその弟。日本人が珍しいのか、おばあちゃんと片言の英語の会話が始まった。「孫娘は私より英語が上手よ」。ラミヤちゃん、14歳。地元の学校に通う中学生だ。しきりに車窓から見えるザグレブの街を案内してくれる。


 「あのトラム(路面電車)の終点には動物園。いろいろ変わった動物がいるの」「私はイスラム教徒よ。だからモスクに行くのよ。日本人は仏教徒が多いって聞いたけど、本当? やっぱり。仏教って平和を大切にするそうね」。

こんな会話が弾む。クロアチア語を教えてくれるのだが、私たちの舌がもつれると屈託のない笑いが飛ぶ。30分の周遊もあっという間。下車すると、地元テレビ局が待ち構えていて私たちの"国際交流"を取材した。


 別れ難くしていると、私たち6人に、おばあちゃんが市場から土産物を買ってきた。お返しに部屋に置いておいた小間物(扇子など)をあげると、ラミヤちゃんは突然、抱きついてきた。今ではかわいいメル友だ。もう16歳、元気にダンスを踊っているという。ザグレブにふさわしい美しい友情が生まれた。

(2013年7月27日号掲載)


=写真=ラミヤちゃんと一緒の弟と祖母

 
ヨーロッパ美の旅