いつまでも健康で快適に過ごしたい-そのためには病気の予防が重要です。では、いつから気を付ければいいのでしょうか。
日本人の成人の3大死因であるがん、脳血管障害、心臓病や、糖尿病、高血圧など生活習慣病を予防するための基本は適正体重の維持です。肥満(特に内臓脂肪型)は高血圧、高血糖、脂質異常を伴いやすく、動脈硬化症を促進し、心臓病や脳梗塞へと進みやすい病態をつくり出します。それ故、ぜひとも避けたいのは肥満です。
中高生にも多い肥満
日本人では、中高生男子の約12%、女子の約10%が肥満です。そして肥満児の15〜20%が、すでにメタボリック症候群です。要因はエネルギー、脂肪、動物性タンパク質の摂取過多、朝食の欠食、運動不足などといわれています。
食育の重要性が叫ばれ、2005年度から学校に栄養教諭が配置されました。そして正しい食生活の習慣を身につけるよう教育していくことになりました。
では、この時期から対策を取れば安心なのでしょうか。
イギリスの研究者が「胎児期に低栄養にさらされ体重が増えずに生まれてきた子は、成人後に生活習慣病のリスクが高くなる」という研究結果を発表しました。日本人の小児を対象にした研究でも、出生時の体重が少ない子の方が血圧が高く、血糖値も上がりやすく、メタボリック症候群になりやすいといわれています。
胎児期などの発達期の環境が不適切だと、成人してから疾患にかかりやすくなることが分かってきたのです。
女性の痩せにも注意
ところで、先進国では若い女性の痩せ体形を称賛する風潮が続いています。
日本では、女子中学生の約16%、20代女性の約20%が痩せです。著しい痩せを来す神経性食欲不振症も、中学生〜大学生の200〜600人に1人に上ります。
低栄養は様々な身体的・精神的障害を来し、将来の骨粗しょう症の大きな要因になります。そればかりでなく、痩せた女性が妊娠した場合、低出生体重児(出生時体重2500グラム以下の子)の出生率が高くなります。
実際に低出生体重児の割合は年々増加し、平均出生体重も1990年以降減少が続いています。低栄養で胎児期を過ごした子どもは、将来、生活習慣病になる危険性が高くなります。

誰しもお母さんのおなかに戻ってやり直すことはできません。でも、今家族全員の生活習慣を見直すことは、家族全員の生活習慣病予防になるだけでなく、次に生まれてくる世代の胎児期からの生活環境改善にもなるのです。
(2013年8月24日号掲載)
=写真=浅岡 麻里(小児科医師=専門は小児科一般)