
「海の日」近辺の3連休が始まる前夜、友人のT氏から「あさって山へ行こう。行き先は任せる」との電話。天気予報は「県北部は雨。南部は晴れ」。南の山をインターネットで調べているうちに、山梨県の瑞牆山(みずがきやま=2230メートル)が目に留まった。
翌朝6時半、T氏に行き先を告げ、一路、山梨へ。中央道を須玉インターで降り、登山口の瑞牆山荘へ向かう。塩川湖、増富ラジウム温泉郷を抜け、秩父の奥深い山中へ。
山荘に近づくと、道の両側に車がびっしり。100台収容の駐車場は車があふれ、周辺を含めた駐車台数は200〜300台にも。ここは金峰山(きんぷざん)(2599メートル)への山梨側登山口でもある。瑞牆山、金峰山とも、首都圏から近い「日本百名山」とあって大変な人気だ。
何とか1台分置けるスペースを見つけ、9時半に出発。樹林の中の快適な登山道はやがて急坂になり、尾根に出たところで展望が開けた。木々の間に初めて姿を現す瑞牆山は、緑の中に奇岩奇峰が林立している。
樹林の中をさらに30分ほど進むと富士見平小屋へ。手前に水量豊かな水場があり、手を切るような冷たさだ。ここから金峰山への道が分かれる。

小休止の後、瑞牆山へ向け出発。いったん上り、下りきると天鳥川(あまどりがわ)の河原へ。干上がった川を渡った先に、高さ10メートルはあろう巨石がどっしり。中央がすっぱり割れており、「桃太郎石」ともいうようだ。 すぐ脇のはしごを上ると、今度はロープを頼りに大岩をよじ登る。さらに登ると、垂直に数十メートルもそそり立つ塔のような岩が現れる。瑞牆山のシンボル「大やすり岩」だ。横から眺める位置に来ると、何と女性が登っている。カメラをズームにして、しばらく見物する。
なおも連続する岩を乗り越えていくと、尾根の鞍部に出た。山頂はすぐそこ。はしごと大岩を登りきると、広い岩盤の上で大勢の人が休んでいる。眺望は360度。東に大きな富士山。北東は山頂部に大岩が見える金峰山。南に南アルプス、西には八ケ岳が連なる。
頂上は人が多くゆっくり座る余地がないため、少し下がった樹林の中で昼食にする。下山の際、鞍部の分岐から弘法大師が修行したという弘法岩に立ち寄った。
岩だらけのため、下りは神経を使う。バランスを崩さないよう注意しながら桃太郎石まで降り、一休み。天鳥川を渡ると上りで、きつくなる。富士見平小屋を過ぎると、後は樹林の中を一気に下り登山口へ。
急に考えて行動したが、さすが「百名山」の名に恥じない、変化に富んだいい山だった。
帰路、武田信玄の隠し湯で、ラジウム含有量世界一といわれる「増富の湯」に立ち寄る。土色に濁った25度と30度の掛け流しの源泉が売りだった。
(2013年8月3日号掲載)
=写真=山頂から見下ろす「大やすり岩」