050 がんの治療 ~広がる「第4の方法」 ラジオ波で組織死滅~

 がんの治療方法といえば手術、化学療法、放射線治療などが思い浮かぶと思いますが、私たちは第4の治療法である「ラジオ波焼灼(しょうしゃく)術」という方法で、がんを治療しています。

 がん組織を焼灼
 聞き慣れない人も多いと思いますので、簡単に説明しましょう。ラジオ波とは、450キロヘルツの高周波電流のことをいいます。これはマイクロ波加熱という電子レンジと同じ原理で、がん組織を100度に熱して死滅させる方法です。

 2000年ごろから本格的に行われるようになった新しい治療法です。現在、日本では肝臓がんの治療の場合に限り保険が使えますが、腎臓がん、乳がんなど様々な部位の腫瘍に対しても行われるようになってきています。

 具体的な治療法を説明します。肝臓がんの場合、患者さんにはまず睡眠薬で寝てもらい、皮膚に局所麻酔をします。超音波を使って観察しながら、長さ20センチ、太さ1.5ミリの針を肝臓の腫瘍組織に刺して、針の先端から高周波を発射し、組織を焼灼します。1回の治療は30分から2時間ほどです。

 針の先端の周囲3センチの範囲を球形に焼灼しますので、焼き尽くされる範囲にがんの組織全体が含まれていれば、切除したのと同じようにがんを治すことができます。全身麻酔が必要ない上、傷は1.5ミリの針穴だけなので、肝臓への負担が少ない、何度でも治療できるなどのメリットがあります。一方、一度に焼灼できる範囲が3センチまでなので、3センチを超える大きさの腫瘍を焼灼するのは難しくなります。

 併用療法で根治も
 最近では、大腸など肝臓以外でできたがんが肝臓へ転移した進行がんに対しても、積極的にラジオ波治療を取り入れています。手術や化学療法と併せて治療することによって、今までは治療が難しかった進行がんにも根治手術を行えるようになってきました。

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 ところで、予防に勝る薬はありません。肝臓がんは慢性C型肝炎をはじめ、原因のはっきりしたがんです。最近では糖尿病、肥満、アルコールの過剰摂取といった生活習慣病による肝障害から、肝臓がんを発症する人が増えています。この場合、生活習慣の改善で発がんは予防できます。健診で肝機能異常を指摘されたら、内科を受診し、生活習慣改善のきっかけにしてください。
(2013年9月7日号掲載)

=写真=成本  壮一(外科・消化器外科科長=専門は外科)
 
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